第2章 廃れた島
島の北側も、上陸した場所と同じように、岩がゴツゴツと迫り出していたり、乾燥した赤茶色の土が広がるような殺風景な場所だった。
ローは鬼哭を肩にかけ、黙々と道を進んでいく。進むに連れてどんどん人が減っていき、本当にこんなところに家があるのかというほど人気がない。
しかし唯一の手がかりは酒場の男の話のみ。
今はそれを信用するしかない。
もともと小さな島なため、島の中心から端へ行くのにそう時間はかからない。小1時間歩くと、聞き慣れた波の音が聞こえてきた。
「...家は近いな」
ローの胸には小さな高揚があった。
長年の夢でもあったフロアズルを使うことが、もうすぐ叶う。”仙人”だろうが、顔が分からなかろうが、本物のフロアズルが手に入ればそれでいいのだから。今更戻る気はない。
__するとその時、向こうに人の気配がした。
ローは肩にあった鬼哭に、すっと手をかける。
『奥に誰かがいる』と本能が伝えていた。
「...仙人、か?」
ローは覇気が使える。見聞色と武装色だ。得意としているのは武装色だが見聞色もそれなりに使うことができる。
相手の気配を姿を見なくても認識することができ、極めれば視界に入らない敵の数や、相手が何をしようとしているのかが読み取れるのだ。
ローはその力によって、向こうの人間の存在に気づいた。
だがどうしたものか、それは全く動かない。向こうもこちらに気づいているのだろうか。
...しばらく、姿の見えない睨み合いが続く。
両者とも譲らず、互いに警戒しあっている。
緊張感が満ちる空気を先に破ったのは、ローだった。
「"ROOM"」
自身の能力、オペオペの実の力を使ったのだ。手を開くとローを中心として薄い膜のようなものが放射状に広がる。この空間は、いわば彼の手術台。ローはこの空間を完全に支配、執刀する。
「シャンブルズ」
指をクイッと曲げるとその瞬間、ローが消える。代わりに小さな石ころが、彼がいた場所に転がった。
ROOM内にあるものなら、なんでも入れ替えることができるのだ。
そして石ころと入れ替わったローは...
気配のもとである人間の前に現れた。
「手間取らせんじゃねェ...。誰だ、お前は」
高圧的な言い方で相手を威嚇しつつ、ローはその人物を見下ろした。
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