第2章 廃れた島
「...どういうことだ?」
ピクリとローの眉が動いた。
「この島の端にそいつは住んでる。フロアズル以外にも色々薬草なんかを売ってんのよ!」
この島に植物はないのに、薬草を売る...一体どういうことだ。
別の島から仕入れているのだろうか、だったら敢えてバンディド島を選ぶ理由はない。もっと需要のある島は山ほどあるのだから。
さっきの店主の話が本当なら、植物は何年も前に毒ガスで消えているはず。では、もともと生息していた植物を何らかの方法で保存しているのか?
ローは頭の中で次々に浮かぶ疑問を思案した。
「だがなぁ〜そいつは絶対に顔を出さないのさ!場所を指定して、そこに包みに入った薬草と、交換する金を置くようにするんだよ」
「変わった人間だな...」
「おうよ!その薬草を買ったやつが知り合いにいるがな、そいつは音もなく現れたと言ってたぜ。文字通り、音もなくな!全く気づかなかったそうだ。
そいつはこの島の人間からは、”仙人”って呼ばれてる」
音もなく現れ、薬草を売る仙人___
酔った男が高揚して喋るこの内容が、どこまで正しいのか微妙なところではあったが、少なくとも、フロアズルは手に入れることができそうだった。
だったらすぐにでも欲しいものだ。ずっとこの島にいるわけにもいかない。ログが溜まる1週間が期限、ローはそれまでになんとかしてフロアズルを手に入れたかった。
「おい、さっきそいつは島の端に住んでると言ったな」
「んん?あ~そうさ、島の北側の入江だ」
男は飲みすぎたのか、眠そうに目をこすり始めた。早いところ話を聞かないと、男はその場で眠りこけてしまうだろう。
「そこに行けばフロアズルが手に入るのか?」
「さぁな〜...どうするかまでは、知らねェよ...」
それだけ言うと、案の定男はカウンターに突っ伏して寝てしまった。肝心なことが聞けていない。
ローはチッと舌打ちを付き、男を一瞥してから一人店を出た。
だが、”仙人”とやらが住む場所の目星はある程度付いた。島の北側の入江、まずはそこに向かう。
___ローはこの時、”仙人”と呼ばれる者が、後に人生を大きく変えることになるとは微塵も思っていなかった。
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