第8章 復讐
怖い。
怖くて。
喉が張り付く。
「そんな些細なことじゃん?髪切ったのだってほんとわざとじゃなくて。明日会ったら謝ろうって、そう思ってたんだよ。だけど、それっきり学校には行けなかった…………」
ゴクン、て。
生唾が、喉を静かに鳴らす。
「裏で手、まわして。その日のうちに会社は瞬く間にガタガタだったよ。鷹司財閥ってさ、そんなすっげー力持ってんの?一瞬で家庭崩壊させられるほどにさ」
「…………」
ピリピリした空気が、こっちにまで伝わって。
肌が、痛い。
「ねぇ姫月。壊れてよ」
「え」
「俺さ、あいつに復讐するためにずっと生きて来たんだ。あいつの大事なもん壊すことだけ考えて、必死に人生設計して来た」
「霧生、く…………」
「久々に姫月に会ってすっげー驚いた。すごく美人になっててさ。
なんも知んないであいつにぐずぐずに甘やかされてここまで愛でられたんだろーなって思ったらむかついた」
ギシ、て。
柱に寄りかかっていた霧生くんがあたしのいるベッドへと乗り上げて、ベッドを軋ませた。
「ずっとふたり見てきたけど、やばいんじゃない?あいつ。少し好意見せたくらいで嫉妬して監禁とか。まぁこっちには好都合に事運んでくれたけど」
「霧生くん、あの」
「ほんとはさ、1週間も監禁されてりゃさすがにあいつのヤバさ気付くかなって思って。だからわざと1週間後助けに行って姫月の心事もらう計画だったんだけど………。姫月も相当ヤバさ半端ねぇな」
くっくって。
笑う目の前の人は、だれですか?
知らない。
あたし。
こんな霧生くん、知らないです。
「だけどまぁ、心手に入んなくたって別に。あいつに復讐なら出来るし」
「…………ぇ」
後ろ手に絡まっていたベルトを、霧生くんが持ち上げて。
がしゃんて。
ベッドサイドへと、引っ掛けた。
先ほどから動かなかった身体からさらに自由が、奪われた。