第6章 距離
「昔、お前のこと怖がらせたことは謝る。悪かった。嫌い、って思われても仕方ないとも思う。」
「………」
な、なんか霧生、くん。
雰囲気、が。
「だけど姫月、無関心でいるのはやめて欲しいんだ。嫌いでもいいから、ちゃんと俺を見て。ひとりの男として、考えて欲しい」
「………」
ひとりの、男、として?
でも。
だけど。
「あ、あのあたし」
あたし。
「……ごめんなさいっ、霧生くん、の、気持ち受け取れない……」
「うん」
「え?」
「受け取って欲しいわけじゃないから」
「?」
「俺をちゃんと見て欲しかったんだ、姫月に」
「………霧生、くん」
「見よう?せっかく映画来たんだから。ポップコーンも買ったし、食べるよね?」
「………はいっ」
怖がらせた……。
怖かった。
うん。
すごく怖かった、けど。
こんな風にお話できるなんて、思ってもいませんでしたけど。
不思議。
嫌じゃ、ありません。
………不思議。
「華」
「薔さまっ」
映画も終わり、映画館の中で時間を潰してくれていた朱莉ちゃんとも合流し、映画館を、出ると。
すでにそこには薔さまが、待っていてくれた。
「華、映画は楽しかった?」
「はいっ」
薔さまを見つけた瞬間駆け寄るあたしの頭を撫でながら、笑顔で薔さまはあたしを見やると。
今度はふたりへとやっぱり笑顔で向き直った。
「華がお世話になりました。ありがとう。霧生くんも望月さんも」
「いえ」
「………せんせーさ、いいの?霧生の前でずいぶん堂々としすぎだけど」
あ!!
そうだ。
あたしなに堂々と抱きついちゃってんだろう。
「華とは親戚だし、迎えに来るくらい当然でしょう?」
「………こ、わ」
「望月さん、『いろいろと』、ありがとう」
「…………」
離れようとするあたしを引き寄せて。
薔さまは笑顔でふたりへと頭を下げると。
あたしの手を引いて歩き出した。