• テキストサイズ

気持ちいいことしませんか

第6章 距離


「え……」


なに、どーいう……?



「とりあえず、座って姫月」
「あ……」


そうだ、映画。
後ろの方がこれじゃ見えなくなっちゃいます。


「ごめんなさいっ」


あたしってば迷惑ばっかり……。
どーしよう恥ずかしいです。


「姫月」

「…………」


そうだ。
霧生くんとお話の、最中。


「姫月とちゃんと、話したくて」
「話、ですか?」
「そう」


話なら、学校でもしてますよね?
ポカン、と首を傾げて見上げみれ、ば。
すごく真剣な霧生くんの瞳と目があった。


「ぇ」


あ、れ。
今、あたしなんでドキドキ、してるんだっけ。
薔さまのときとは、違う……。
なん、だろこれ。


「ずっと、好きだったんだ」


「………」



『好き』?
誰が、誰、を?


「………朱莉ちゃん、を?」


「は?」


あれ?
なんかまずいこと、言った?


「ぁ、あの……」


はぁー、っと。
見るからに長くため息ついて項垂れる霧生くんに、さすがに焦っちゃいます。
あたしまたなんか、迷惑かけちゃったのかな。


「霧生く……」



謝ろうと、肩へと触れようとした手は、その一歩手前で動きを止めた。

『僕以外の男とふたりになっては駄目だよ華』
『僕以外、誰にも触れさせないで』



薔さまとの約束。
ふたつも破ってしまいました。


どーしよう。


「………姫月」

「……っ、はいっ」


低い、声。
びっくりした。
初めて聞いた気がします。

「デートの最中に、他の男のこと考えてた?」

「で、でででーと!?」

なのですか?
これ……っ


「俺はそのつもりだけど」


………ビクンっ


右手に自分の手を絡めて、霧生くんはあたしの右手甲へと、口付けを送った、から。
思わず体が反射的に反応してしまいました。


「こんなことしたことないんだけど、お姫さま相手なら必要かな」
「霧生……、くん…っ」
「ん?」
「手、手を、そろそろ離していただけません、か!?」
「あ、ああうん、ごめん」


……び、びびびっくりした。
あれは、なに?
なんの儀式?
どーしよう。
さっき手にキスされた時、薬でも皮膚から吸収されたのでしょうか。
さっきからドキドキが、止まりませんっ。
あたしもしかして。
変な病気にかかってしまったのでしょうか………!?
/ 105ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp