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気持ちいいことしませんか

第6章 距離





「まじで?よくあのドS王子が許したね」
「薔さまは意地悪じゃありません」
「あ、意味調べたんだ……」
「薔さまにお聞きしました」

「……そう」



日曜日。
約束どーり、映画館、にやって来ました。
ちょっとドキドキ、ですが。




「あれ、先入ってて良かったのに」
「そんなわけにはいきません」


上映案内が流れてから数分、おっきな荷物を抱えて霧生くんが合流しました。


「ふたり、お茶で良かったかな?アイスティもあるけど」
「あたしアイスティ」
「そんな霧生くんっ、あたし、自分で買えますからっ」
「あれ、お茶駄目?ごめん」


そ、そんなシュンとされては……。


「違います、あたし自分で……っ」
「いいからいいから。ポップコーンも買って来たよ」
「!!ならせめて、自分で持ちますからっ」
「ひーめ」
「朱莉ちゃん」
「いんだよ、やらせとけば。霧生だって男のプライドあんだからさ」

「……プライド、ですか」


「いい方微妙だけど……。たまにはいい格好、させてよ」


「………お言葉に、甘えていいのでしょうか?」


「いいんだって。入ろう?真っ暗になっちゃう!」


「……っえ!?っ、わ……っ、霧生くん」



片手に飲み物ホルダーを支えながら、空いてる片手であたしの右手を掴むと。
器用に霧生くんは早足で指定された番号の扉まで、連れてきてくれた。


「朱莉ちゃん……っ!?」


「先入っててー。あたしトイレ」


「ほら、入ろう?」
「でも……」
「始まるから」


霧生くんに押されるように中へと入れば。
すでにもう真っ暗で。


「あたしやっぱり、朱莉ちゃん連れてきますっ」


暗くてはわからないかもしれないし。


そう思って席を立ち上がろうと、すれば。
パシ、と。
右手首が霧生くんに捕まった。


「………霧生くん?」
「ごめん、姫月」
「?」
「望月は、来ないよ」
「え」



「俺がそう、望月に頼んだんだ」




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