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気持ちいいことしませんか

第6章 距離






「日曜日?」
「………はい」
「友達って?」



今日は薔さまがまだお仕事残っていたため、薔さまが呼んでおいてくれた車で先に帰り。
7時前。
薔さまがお戻りになられたと連絡を受けて、こうして薔さまの部屋をノックしたわけですが。
やっぱり。
切り出した途端にネクタイを緩める薔さまの声色が、変わった。


「ぁ、のお着替え中すみませんっ。やっぱり、なんでもありません、失礼しますっ」


一気に早口でまくし立て、部屋から立ち去ろうと、すれば。


「華」


薔さまの声、が。
それを制する。


「着替えるから待ってて」
「……はい」




『待ってて』。
その一言で、あの部屋から出ていくことは出来ない。
出ていけば。
薔さまの言葉を破ったことになってしまうから。
そしてそれはつまり。

『全部、話す』。


ギュ、と目を閉じて、スカートの裾を握りしめた。




「お待たせ」



ぎし、とベッドが軋み。
薔さまが腰掛けたのだとわかる。


「華」
「……はい」


座ったまま、立ったままだったあたしの両手を取り。


「友達って、誰?」


さっきの続きを、聞いてくる。
だけどその表情は、穏やかで。


怒って、ない?


「華」

怒って、ない、なら……。


「朱莉ちゃん、と……」
「うん」
「霧生、くん……」

「………」


「━━━っ」



「霧生?」



霧生くんの名前、やっぱり駄目だったんだ。
空気が、割れた音がしました今。


「霧生も、行くの?どこに?」
「あ、の映画館……誘われ、て」
「誘われた?」
「はい……」
「何の映画?」
「これ」

霧生くんがくれたチケットを差し出せば。


「ふぅん……」


それを手に取って。
間が空いた。


「いいよ、行ってくれば」
「いいんですかっ??」
「行きたいの?」
「はい」
「なら行ってくれば。楽しんでおいで」


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