第6章 距離
どーしよう。
やっぱり、あたし、薔さまを怒らせてしまったんだわ。
車はお家とは反対へとどんどん走っていくし。
さっきから薔さま、口も聞いてくれない。
人通りも少なくなってきているみたいだし。
どーしよう。
あたし、誰にも気付かれない場所に捨てられちゃうのでしょうか。
ううん。
薔さまはそんなことしない。
薔さまは優しい方ですもの。
首をぶんぶん振りながら頷いてみるけど。
やっぱり車は全然人気のない場所へと走っていっているようで。
まさか、な恐怖に涙が溢れた。
「薔、さま」
「んー?」
「ご、めんなさい。ごめんなさい」
泣いたりしてはだめ。
また、嫌われてしまう。
駄目。
「………」
だけど。
いくら謝っても答えてくれない薔さまに。
もうたぶん、恐怖も不安も限界みたいです。
「薔さま」
やっと停止した車。
に、思わず薔さまのシャツを無意識のうちに掴んでしまう。
「ごめんなさい薔さま。お願い、嫌いにならないで」