第6章 距離
ああほんとに。
かわいいなぁ。
食べちゃいたい、このまま。
「約束して?華」
「はい、お約束致します、薔さま」
「ほんとに?」
「はいっ」
無知で純粋で。
従順で。
汚れを知らないお姫さま。
華を汚していいのは、僕だけだ。
「約束破ったらお仕置きね、華」
「おし、おき」
「真っ赤。何考えた?」
「いえ、そんな……っ」
「乗って、華」
「は、はい」
にっこりと笑って、助手席のドアを開けてやれば。
何も疑うことなく嬉しそうに乗り込む華。
誰の前でもそんなに警戒心、ないの?
僕の前でだけだよね?
華。
「あ、ぁの薔さま」
「ん?」
「どちら、へ?」
「………」
震える声でそう問いかける華には答えずに。
チラリと一瞬だけ、華を見やる。
その視線にびくびくと体を強張らせる華を見て、気付かれないように口角を、上げた。