第5章 代償
「ねぇ華」
「はい、薔さま」
「今日は少し、前に進もうか」
「ぇ」
焦る、なんて僕らしくない。
ゆっくりゆっくりと、時間をかけるつもりだった。
だけど。
『霧生くんが』
華が、初めて口にした男の名前。
華が、初めて泣かされた、男の名前。
もう少しだけ。
華には僕しかないと思い込ませるには。
もう、一歩、進まなければ。
「…………華」
「ゃ……っ、ごめんなさい、薔さま……っ」
ぇ、……っこ、れ?
少しだけ、軽く口付けて。
右手はスカートの中へと。
そのまま深く、舌を絡めて。
さらに下着の上から敏感な場所へと手を伸ばせば。
すでにその場所は湿り気を十分に帯びていた。
「ご、めんなさぃ、あたし……っ」
「………」
ああ、そっか。
『気持ちいいこと』、しよっか。
あれだけで。
期待して、こんなにも反応する体になってたんだ。
「ごめんなさい、嫌いにならないで……っ、ごめんなさい」
両手を顔の前に持ってきて泣きじゃくる華の手を退けて、下着の中へと指先を侵入させれば。
すぐにビクン、と体は跳ねあがり。
そのまますでに準備万端な突起を上下にあがけばすぐに、厭らしく卑猥な音が鳴る。
「っあ、薔、さま……っ」
涙を溜めて顔をふるふると何度もふる華へと合わせた視線。
びくびくと痙攣する体を確認して、指を引き抜いた。
「あ……」
「華」
そのまま華でびしょ濡れになった指先を口に含めば。
華はさらに真っ赤に顔を染めて、顔を反らす。
「嫌いになるわけないよ、華。僕にこんなに感じてくれて、嬉しいのに」
「かんじ、て?」
「そう、イきそうだったのに、イけなかったでしょ?どんな気分?」
「………いき、そう?」
「そう」
知らぬ間に、達してすぐに気を失ってしまうから。
今日はちゃんと教えてあげる。