• テキストサイズ

気持ちいいことしませんか

第5章 代償


ほんと、食べちゃいたいな。



「し、薔、さま?」
「何?」
「あ、の、お夕飯……」

「んー」



ゆっくりと起き上がる華の首筋に唇を寄せれば。
焦ったように身を捩る。



「大丈夫だよ、少しだけ」
「で、でも遅れたらまたお母様に……」



叱られる。



そう、言葉にする前に華の頭ごと引き寄せてキスをした。



「!?」



びっくり顔で真ん丸に、明るいブラウンの瞳を大きく揺らして。
僕を見る華と目を合わせてから。
両手を頬へと伸ばし、目を伏せる。
そのまま角度を変えながら深く舌を絡めていけば。
拙くも懸命に、華はきちんと僕に応えてくれるんだ。




「ねぇ華」


「ぇ」




トサリ、と。
優しくそのままベッドへと押し倒す。



不安気に揺れる瞳は、逆効果なんだっていつか教えて上げないとな。



「『気持ちいいこと』、しよっか」

「ぇ」





ずっとずっと、大事にしてきた。
一から全部、大切にゆっくりと教え込んだんだ。
僕以外見えないように。
僕以外、考えないように。
甘やかして、怖がらせて、誰よりも華を支配してきた。
僕なしでは、生きていけないように。





「大丈夫、みんな今頃下のリビングだよ。少しくらいなら声も音も聞こえないから」
「そんな……」




ほら、すぐ泣く。


すぐに大粒の涙を溢れさせる瞳ごと、食べるように吸い付いた。



「大丈夫。お母様のことなら心配ないよ。」
「で、でも」
「父が家を開けている今は、僕がこの屋敷の主だよ。父と血の繋がりのある僕と華の方が、あの人よりも数倍権力なら持ってる」
「薔、さま」
「華を傷つけるなら、例え実の母でも許さない」



「………っ」




どこかまだ、母親に怯えながらも。
華はゆっくりと小さく頷いた。
/ 105ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp