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気持ちいいことしませんか

第4章 転校生


3日前。
珍しくもうちに転校生がやって来た。



霧生 斗榿。



忘れもしない、この名前。
華を泣かせた張本人。
二度と華と顔を合わせないよう、父親の会社にまで手を回したのに。
二度とこの世界に、戻ってくることないように。
ちゃんと手を、回したのに。
なんでこいつ。




「鷹司先生」
「……はい」


全神経を思考トリップさせていたせいか、一瞬遅れた反応。
取り繕うように、営業用の笑顔を張り付かせた。


「学校はどうですか、慣れましたか」
「ええ、皆さんにはよくして頂いていますから」
「それは良かったです。お父様もお喜びでしょう」
「ええ、父にも教頭先生にお世話になっていることは伝えてありますので」
「そうでしたか。いや、お恥ずかしい」
「事実を述べただけですから。………教頭先生、今日も数学準備室、僕に貸して頂いてよろしいでしょうか。勉強を教える約束をしてしまいまして」
「もちろん、構いませんよ」
「ありがとうございます」



本来ならば新任の自分に宛がわれる部屋などないのだが、使えるものは権力だろーが使ってやる。
華との時間は、誰にも邪魔などさせない。
父親と呼ぶには反吐が出るくらい滑稽な話だが、まぁ戸籍上そーなっているのだから仕方ない、ここの理事長。
なんの因果が血縁関係とやらがあるのだ。
そのおかげで個室を1部屋宛がわれているのだから、この際その滑稽な間柄も悪くはないのかもしれない。







「華、何か変わったことは、ない?」
「ぇ」


華があの転校生に振り回されていることは知っている。
いつ僕のところへ泣きついてくるかと、様子を伺っていたのに。
もしかしたら忙しい僕に気を使っているのかもしれない。
だからこうして、話しやすい状況まで作っているのに。


「いいえ薔さま、大丈夫ですわ」


正直言ってショックだった。
取り繕ったわけでもない、華の自然な笑顔。
僕にはなんでも、話してくれていたのに。


「………そう」



華。
キミはほんとうに僕を裏切らないのか、いつ他の男へと着いていってしまうのか。
僕は不安で仕方ないよ。

ねぇ華。


だから。
証明して見せてよ。


キミはほんとうに、ずっと僕のそばにいてくれるの?


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