第2章 サディスティックな目覚め
「そう、華は頭いいね」
「いいえ、薔さまの教え方が上手なのです」
かわいい華。
僕だけのお人形。
僕だけの、お姫様。
「?」
華のカバンから見え隠れする、四角い箱。
しかもカバンに入れるにしては、ずいぶん大きな。
「華、これは?」
「ああ、クラスの男の子から頂いたのです。お菓子だと伺っていたのですが、中にネックレスが入っていたので、たぶんどなたかと間違われたのかと思いまして。明日お返ししようかと」
「そう」
いかにもアクセサリーが入ってそうな丈夫な箱だけど。
これをお菓子と信じて疑わない華にも問題は山積みなんだけど。
確かに感受性、ことに恋愛に関しては無知なんだから仕方ない。
僕がそう、育てたんだから。
「いいよ、僕から渡しといてあげるから。誰?」
「よろしいのですか?」
「いいよ、教師の仕事だから」
「ではよろしくお願いします」
律儀に笑顔で頭をさげる華。
僕の言うことを信じて疑わないかわいい華。
そんなだから、すぐにつけこまれちゃうんだよ?
こんな風に。
「ねぇ華?」
宿題も終わり、明日の用意をする華を、ベッドまで手招きする。
「あんまり男の人から物もらっちゃだめだよ?」
「ぇ」
そのまま腰に手を回せば、ちょうどよくストン、と。
彼女は僕の膝の上。
「それはね、例えお菓子でも、『好意』、だからね」
「こうい、ですか」
「そう、それを受け取ったら好意ごと受けとることになるよ」
「……いけないこと、なのでしょうか?」
かわいい顔を難しく歪めて。
必死になって理解してくれようとしているのが、よくわかる。
でもね、華。
「いけないことなんだよ」