第2章 サディスティックな目覚め
「……」
僕の、好きな髪の毛。
ああそっか。
僕が好きなのは華そのもの、なんだけど。
それでずっと切らずに伸ばし続けていたのか。
もちろんふわふわの真っ黒なロングヘアを撫でるのは、僕のお気に入りではあるのだけど。
「華」
大きな瞳から流れ出す涙を両手のひらで拭いながら。
静かに、彼女は顔をあげた。
「髪ならまた伸ばせばいいよ」
「薔さま」
「それよりそんなに擦っちゃ真っ赤になっちゃうよ?」
「……薔さま…っ」
両手首を捕まえて、涙へと口づけすれば。
今度は顔を真っ赤にして、彼女は恥じらうように顔を背ける。
ああほんと。
かわいいな。
「華は短い髪でも十分、かわいいよ。それよりちゃんと揃えなきゃね。僕がもっとかわいくしてあげる。待ってて、今、用意してくるから」
「はいっ、薔さま」
ほら。
華を笑顔にできるのは、僕だけなんだ。
華を泣かせていいのも、僕だけ。
華を傷付けていいのも。
全部全部僕だけだ。
華の涙は魔力がある。
あんな顔、誰にも見せない、見せたくない。
僕なら華を、泣かせない。
だけど。
華の泣き顔を、もっとみたい。
泣かせたい。
怯えさせたい。
ねぇ早く、大人になって。華。