第2章 サディスティックな目覚め
「華、なんで僕がキミを嫌うの?」
「嫌わないの?」
「もちろんだよ。だから話して?誰にやられたの?」
「……-同じ、クラスの…」
『男の子』
そう、小さな声で哀しそうに呟いた瞬間に芽生えた殺意は、今思い出しても相当なものだったように思う。
自分以外の男が、僕の華を傷つけるなんて。
大切に大切に育ててきたお姫様が、僕以外の人間にこんなにも簡単に壊されるなんて。
「……薔、さま」
驚くようにそう、僕の名を呼ぶ華の声で我にかえる。
「ん?」
「やっぱり、怒ってますか」
「怒る?僕が?」
驚くように見上げていた華の瞳が、今度は怯えたように揺れた。
怯える?
華が僕に?
無言でそのまま華を見下ろせば。
その瞳はみるみるうちにさらに揺れ、きれいなきれいな涙で溢れ出した。
その姿が綺麗で。
自分が華にこんな表情をさせているのかと思っただけで。
怯える華の表情も。
涙を溢れさせながら泣くのを耐えているその姿も。
全てに欲情、されたのだ。
「……薔さま…っ」
「……」
「ごめんなさい……っ、せっかく、薔さまが誉めてくれたのに……っ」
ついには溢れるだけだった涙がそのおっきな瞳から流れ出す。
その姿もわずか10歳とは到底思えないくらいに官能的で。
思わず見惚れていたせいで、遅れた反応。
それは結果的にさらに華に不安要素を植え付けたようだ。
「薔さまが好きだと言ってくれた髪の毛、守れなかった…っ」