第2章 サディスティックな目覚め
「華、開けて。僕の言葉わかるね?華」
「……」
もちろん鍵などかかっていないのだから、強引に入ることは簡単だが、それじゃ意味がない。
僕を拒絶したままにするなんて、許さない。
ちゃんと僕を、受け入れて。
無言でドアの前に立つことたぶん、ほんの数秒。
ガチャリと。
遠慮がちにドアがあいた。
やっぱり華は僕を拒絶なんかしない。
華が、僕を裏切るわけなどないんだ。
「………華?」
だけど。
「ごめんなさい薔さま、ごめんなさい」
ドアの向こうに立つ華は、涙で顔をぐしゃぐしゃに歪ませて。
いや、うん、ここまではいつもとあまり変わらないのだけど。
違うのは。
そう、いつもと今日は、美しい華の姿が少し違う。
「どーしたの、それ」
僕の言葉にはっとしたようにマフラーを頭に巻き付けて、ぐしゃぐしゃになった顔をさらにぐしゃぐしゃに歪める華。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
そう小さく、呟きながら。
「ごめんなさい薔さま、嫌いにならないで。ごめんなさい」
「華、誰にやられたの?お母様?」
華の母親は、華がまだ赤ちゃんの時になくなっている。
代わりに兄である僕の父親が、華を引き取り面倒を見てきた。
だけどそれを僕の母親はよく思っていないのだ。
だからまた、日に日に美しくなる華に、母親が手を出したと思っていた。
だけど。
華はただ、首をふり泣き続けるだけで。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と。