第10章 ONLY YOU
「な、何を仰っているのか私にはよくわからないのですが…」
「まだわからなくていい。お前には何も関係のないことだ。これは私の問題。言ったところで何も変わらない…」
そう言って私を見下ろすマユリ様の瞳には熱がこもっている。
そんな眼差しで見つめられて、私の心拍数と体温は一気に上昇する。
こんな近くでマユリ様と見つめ合えて…どうしたらいいかわからない。
行き場に迷う両手を胸の前で握りしめる。
マユリ様は私の後ろ髪をすっと掬い落とし、優しく頬を撫でた。
「こうすることで、私の欲求をほんの少し…満たすことができる」
マユリ様に熱を帯びた微笑みを向けられる。
「私はーー…」
私は無意識に頬を撫でるマユリ様の手に手を重ねた。
「マユリ様…」
私が触れた瞬間、マユリ様はハッとした顔で私から手を離した。
「失敬。もう行っていいヨ」
マユリ様はすっと私から離れ、踵を返して部屋の奥へと歩いて行ってしまう。
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