第10章 ONLY YOU
背後でドアがガチャンと閉まる。
だ、誰!?
私は自分を引き込んだ手の主を見上げた。
「マ、マユリ様!?」
え?
何でマユリ様が??
頭に?しか浮かばない私は状況が把握できず、ただ目の前のマユリ様を見つめることしかできない。
マユリ様はうつむいていて表情を伺うこともできない。
「あ、あの…マユリ様?」
恐る恐る、また声をかけてみる。
すると、マユリ様は突然私の肩を両手で掴み、ドンッと壁に押し付けた。
私は驚き過ぎて声も出せないし、マユリ様が近過ぎて緊張して顔を見上げることもできない。
固まったまま微動だにできないでいると、ぽつりぽつりとマユリ様が小さい声で話し出す。
「いつもいつも、お前は私の頭の中を引っ掻き回す…。それがわざとなら駆け引きを楽しむことに意識を持っていくことができるのだが…図らずも無意識だ」
それは私に言っているのに、ただの独り言のようにも聞こえた。
_