第10章 ONLY YOU
「マユリ様…!」
離れてゆくそのぬくもりが名残惜しくて、思わずあなたを追ってしまう。
「何かネ?」
マユリ様はぴたりと止まってはくれたけど、私に背を向けたままだった。
引き止めたは良いものの、何て言おうか迷ってしまうところだったけれどーー…
「またいつか気が向いたら…今日と同じことしてくださいますか…?」
口をついて出たのは、私の想いを少しだけ乗せた願いだった。
でも、マユリ様は何も言ってくれない。
…それでもいい。
あなたがさっき感情のままに私を引き寄せてくれたから、私もあなたへの想いを少しだけ伝えたくなっただけです。
「私…お待ちしてます」
私はマユリ様に一礼し、そのまま部屋を出た………
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