第1章 第一章
私は着物の裾を膝まで上げて浅瀬の川の中に入った。
冷たくて気持ちが良い
大きな岩に腰を下ろすと魚を見つけた。
そっと釣竿を垂らす
夏なのに爽やかな風が吹く
穏やかな時間がゆっくりと過ぎていく
白い雲はなだらかに流れる……
…………
…………
zzzz
「おい。おい、起きろ」
「ふにゃ、もう御飯ですか?」
「たわけ、何故に俺がお前の飯を作らねばいかんのだ。」
ほっぺたをつままれて起こされた
「いはひれしゅ、のぶばばさば」
「よくもこんな所で寝れるものだ。ところで魚は釣れたのか?」
あっ、忘れてた
「河童のほうがましだな。 ほら、帰るぞ。雨が降りだしそうだ。」
手を差し出して立ち上がらせてくれる
こんなさりげない優しさが嬉しくて少し照れくさい
帰る支度をしているとポツリ、ポツリと雨が降りだし始めた
急いで馬に乗って走ったが、雨はどんどん激しくなっていく
「この先に狩リ小屋がある。そこまで跳ばすぞ、しっかり捕まれ。」
信長様の厚い胸板に腕を回しぎゅっと抱きしめた
冷たい雨の中でも身体から伝わる体温はとても暖かかった