第1章 第一章
水を飲みに台所へ行こうと廊下を歩いていると人目を避けるように歩く人影を見つけた
「何してるんですか?信長様。」
「…なんだ、 か。…ちょうど良かった。鷹狩りに出掛ける。付き合え。」
手を捕まれ、早足で馬小屋へ向かう
「なんか急いでます? 小姓は付けないのですか?」
すると綺麗な顔が近づき、人差し指を唇に当てられる
「しっ、黙ってついてこい。訳を尋ねるのならお前も共犯にするぞ」
そう言って私を抱き上げ馬に乗せた
(このパターンは秀吉さんに内緒で出てきたやつだな。可哀想に秀吉さん、城中を探し回るんだろうなぁ…)
慌てふためく秀吉の姿を想像して笑ってしまう。
「何を一人でニヤついておる。そんなに俺と二人きりなのが嬉しいのか?」
後ろから顔を覗き込まれてドキッっとする
「信長様と一緒だと身の危険しか感じません! 結局は私が秀吉さんに叱られるんだから」
信長様は楽しそうに笑うけど、私の心臓は飛び出しそうなくらいドキドキしていた
久しぶりに信長様と二人きり
馬に乗りながら、後ろから優しく包まれる温もりに安らぎを感じる
好きっ、と言って抱きつけたらどんなに楽だろうか
私が安土に来た日の夜の約束
私から信長様を求めるまで待つと言ってくれた
本当にこの人を好きになるとは思わなかった
(今でも私の事、待っててくれてるのかな? っていうか私から好きって言わないといけないって事だよね? う~ん、どうやって伝えよう。)
「何を赤くなったり青くなったりしている。唐辛子の真似か? もう着いたぞ」
そこは小さな林の奥の川沿いだった
「凄く綺麗な場所ですね。川に入っても良いですか?」
「河童と間違われない程度に遊んでおれ」
そう言って釣竿を渡し信長様は鷹狩りを始めた