第1章 2代目は継娘
「ブラザーたちに全部、食われちまうし!」
「とりあえず、ドアの外で待ってて」
「あ、はい」
なるべく見ないようにしながら部屋を出たカラ松は、ドアにもたれて天を仰いだ。
「終わった…。松野カラ松は、終了しました…。つーか考えたら、明日でもよかっただろ!馬鹿か、俺!」
ドアの向こうで声がする。
「ちょっと!!出れないでしょ!」
「あ、あああ!すみません!」
あわてて離れると、○○が出てきた。
「行こっか」
「あ、はい」
○○はカラ松の鼻に、指を置いた。
「ため口でいいって、言ったよね」
「え。いや、それは」
「私がいいって、言ってるの。普段のカラ松でいてよ。演じてるのかそうじゃないのかわからないけど、面白いから」
「ブラザーたちは、痛いって言いますけど」
「私は、好きだけどな。何かね、元気出るの」
カラ松の顔が、パアッと輝いた。
「オゥケイ、リーダー!」
「あはは、それそれ!」
この人は、自分をちゃんと見てくれる。自分を受け入れてくれる。カラ松は○○のことが、好きになった。
台所でクッキー作りを始める。カラ松は、その手早さに関心する。
「このくぼみに、好きなジャム入れて。こっちはこのままね」
「こんなに手間がかかるものなのか」
出来上がったクッキーを、手に取る○○。
「あーん」
「え?!い、いや、自分で食べます…食べるから!」
「あーーーん」
「あ、あーん」
口に入れると、香ばしい香りと味が鼻へと抜けていく。
「んまい」
「クッキーは自信あるんだよ」
美味しそうに食べるカラ松を、嬉しそうに見る○○。カラ松はその表情を、愛しいと思った。
「2代目!あ、いや。○○、俺はあんたを守りたい。あんたを守るのは俺だけでいい」
「え、やだよ」
「あ…、そ、そうだよな、俺なn」
「守られるだけなんて、やだ。私も守りたい」
「え」
「私ね、おじさんに暗殺の術を教えてもらったの。本を片手にね。でもそんなの、使いたくない。人を殺すんじゃなく、人を守ることに使いたい」
ちらと時計を見た○○は、あわてふためいた。
「やっば!!晩御飯、作んなきゃ!カラ松、手伝って!」
「オゥライ!マイレディ」
「あはは。やっぱりそれ、好き!」