第1章 2代目は継娘
○○の手が、カラ松の背中を掴んだ。カラ松は○○の頭を撫でる。
「なかなぁいでぇ♪」
「ぶっ!あはははは!なに、それ!」
「ふっ。笑ったな、それでいい。あ、いや、それでいいんですよ」
「いいよ、ため口で。ありがとう、カラ松。元気出た」
「お役に立てたなら、何より。あと、ゴミ拾い。俺も参加するから」
「え。いいよ、ホントに」
「いや、これは俺の意思」
ウインクするカラ松に、赤面する○○。
「あ、ありがとう」
去って行く後ろ姿に、短くため息をつくカラ松。
「あの顔は、ノーフェアだぜ…。可愛すぎ…」
部屋に戻るとおそ松たちは、ばつの悪そうな顔をしていた。
「2代目、泣いてたね」
「後で謝ろう」
「うん!それがいい!」
見ればクッキーの器は、空になっていた。
「お、俺のクッキー…。2代目が作ってくれた、クッキー…」
「ごっめーん、食べちゃった」
「ええええええええええ?!」
「また焼いてもらえば、いいじゃん」
カラ松は部屋を飛び出し、○○の部屋にやって来た。
コンコン
「2代目、俺です。カラ松です」
返答はない。ノブを回すと、あっさり開いた。
「失礼しまーす」
中に入るが、○○はいなかった。ふと見るとテーブルに、極道のノウハウが書かれた本が置いてある。
「勉強してたのか」
普通の生活をしていた女性が、いきなり2代目になったのだ。何をどうしたらいいかも分からないのに。
サポートをすると言っていたイヤミは、あれから姿を見せない。
「苦悩したんだろうな…。なのに、俺たちは…。俺たちが、サポートしなきゃな」
カチャ
○○が、シャワールームから出てきた。真っ裸で濡れた体を、拭きながら。
「「え」」
少しの沈黙。そして
「きゃ」
「うわああああ!!み、見てません!見てませんから!」
「え…、あ…。うん」
「っつーか、いつもそんな真っ裸で出てくるんですか」
「誰か入ってくるとか、考えてなかったから…。てか、どうしたの?」
「あ、いや…。大したことじゃないんですが」
「うん」
「クッキー、食べ損ねてしまいまして…」
「…………ぶはっ!!あっはっはっは!なぁんだ、そんなこと?」
「そんなことって!せっかく2代目が作ってくれたのに!」