第13章 Blow! 〈朝日奈 乃愛〉
『勝手に入らないで下さい』
「君の両親から合鍵を貰っているからね。合法だよ」
『最低…!出て行ってください。此処は私の家です。貴方がこれ以上此処にくるのなら私は正式に弁護士を立てて貴方を訴えます』
「だからそれは…」
『揉み消される事はありません。今の会話は録音しました。これを証拠にします』
「ちっ…」
最悪。ドアに手をかけた時に録音しといて正解だった。人の家に勝手に入るなんて。
「本当に…大丈夫なのか?」
『こんなんじゃ寝る気にもなれないし、安心出来ない。自分の家がこんなに怖く感じたのは初めて』
かと言って誰かのお家に泊めてもらう訳にはいかない。もう、どうしたら良いの…。
「俺の家…来るか?」
『そんな…悪いよ。私は大丈夫』
「…大丈夫じゃない」
『…!』
「行くぞ」
手を握って連れて行ってくれる。今は頭がぐちゃぐちゃで何も考えられそうになかった。
『ま、待って…。持ってくる物あるから、ちょっと待ってて』
必要なものを袋に入れて持っていく。本当はあんな奴の来た家に入るのでさえ億劫だけど、仕方がない。
「あ、お姉ちゃん!」
「今日はおフクさんがいないから俺が料理を作る予定だったんだ。父さんも今日はいないし」
『じゃあ、料理手伝わせてほしいな』
「お姉ちゃん、今日泊まっていくの?」
『うん、いろいろあってそうなったんだけど…。夕香ちゃん、私、夕香ちゃんの部屋に一緒に寝て良いかな?』
「良いよ!布団用意しとくね!」
『ありがとう』
本当、助かった…。取り敢えずこのままじゃ駄目だ。なんとかしないと…。
『じゃあ、私料理作るから、台所借りるね』
「ああ。頼む」
取り敢えず、冷蔵庫に残ってる物で作ろう。今日は鮭のムニエルにしよう。それなら簡単に作れるし。
「わぁ…すごーい!美味しそう!」
『ムニエルだからこれ一個しか作れなかったけど、ご飯なら沢山あるよ』
「凄いな」
『これくらいしか出来ないし…』
「夕香、お姉ちゃんとお風呂入る!」
「ゆ、夕香…!」
『良いよ。私も夕香ちゃんとお風呂に入りたい!』
ちゃんとパジャマも持ってきたし、大丈夫!やっぱり小さい子は癒しだ…。
「ごちそうさまでした!」
『食器片付けるね』
「ああ。夕香、お風呂掃除はやったか?」
「うん!お姉ちゃん!入ろう!」
パジャマと下着を持って、夕香ちゃんとお風呂に向かった。