第13章 Blow! 〈朝日奈 乃愛〉
豪炎寺も出て行ってしまった。残っている生徒はもういない。最悪の状況だ。
『何をするつもりですか』
「君が従わないなら従わせるだけだよ」
逃げないと…!次の授業のチャイムが鳴ってしまう…!今なら…!
「ちっ…!」
「朝日奈!」
『豪炎寺!』
「何も無かったか⁉︎」
『大丈夫!逃げてきた。早く行かないと次の授業始まっちゃう!』
「ああ!」
こんなの続いたら精神的にキツいって!いつまで続くんだろ…。
『やっと、放課後…!』
「すぐに部活に行け。彼奴に見つかる前に」
『分かった。また後でね…』
「ああ」
直ぐに部室に向かった。先輩達がいる所を見ると少し安心する。こんなんじゃおちおち眠れもしない。
『今日も自主練しよう。途中で合わせて、繋がったら最初から通してみる。土曜日に出た課題も各自で直す。練習を始める前に土曜の合わせで気づいた事を話そう』
「そうだな」
「俺からだ。途中13小節から少しテンポが乱れてた。意識して合わせた方が良いと思う」
「俺からもあるぜ!朝日奈!裏声になった時に少し聞こえにくくなるんだ!裏声強くしといた方が良いと思うぜ!」
『分かった。他にある?』
「多分、大丈夫…だと思います」
『それじゃあ自主練始めよう』
裏声強くしとかないと。息漏れしてるとこ確かにちょっとあったかも。部活の時間だけが唯一の安らぐ時間だ。
「今日はこれで終わり。片付けして速やかに帰ること」
『はい』
「大丈夫…ですか?」
『え?』
「練習中…元気が無いように見えたので…」
『だ、大丈夫!ごめんね。心配かけちゃって』
逃げる様に部室を出て、校庭に向かった。豪炎寺が居るところに行きたかった。
『豪炎寺!』
「朝日奈…!大丈夫か?」
『うん。部活中は何もしてこなかった』
「何かが可笑しいな。いきなり部活になったら手を出して来ないのは、どういう事なんだ…?」
『家の中にいそう』
「は…」
『彼奴ならやりそうだよ。合鍵とかお父さん達から貰ってても不思議じゃ無いし』
「恐ろしいな…。いや、それ以上だ…」
豪炎寺までヘロヘロになる始末。一体どうなってるんだ、この状況。家の前に着いたから、恐る恐る玄関のドアを開けてみる。豪炎寺には待機してもらってる。
「やあ」
やっぱり、いるよ…。なんなんだろう。ここ、私の家なんですけど。不法侵入で訴えたいレベルで迷惑。