第12章 Choose! 〈綾織 星羅〉
「何処か直して欲しい箇所はございますか?」
『いいえ、大丈夫です』
「それでは次は靴の確認をしましょう」
今度はシルバーのハイヒール。ひええ…シルバーのハイヒールなんて女子高生は履かないよ…。
「靴擦れ防止に踵の接触部にスポンジがついていますのでご安心下さい」
『は、はい。ありがとうございます。サイズも大丈夫です』
「承知致しました。それでは本日の衣装合わせは終わりです」
『ありがとうございます』
部屋に戻ってもまだ緊張していた。ドレス着れた時は嬉しかったけど、結構緊張したし。これで大勢の人も来るだろうから心配だなぁ。
コンコンコン
「いるか」
『う、うん』
「衣装合わせは終わったのか」
『さっき終わったばっかり。サイズの確認は大丈夫。ぴったりだったし直すところも無かった』
「なら良かった」
当日、鬼道君にも見られるのか…。ど、どうしよう…。
「当日の事なんだが、当日苗字で呼び合うのは不自然だからやめた方が良い」
『じゃあ、有人君って呼べば良いの?』
「ああ。俺は星羅だな」
なんだろう、この感覚。名前を呼ばれると、変な感じになる。胸の中が震える様な、そんな感覚。
『当日だけだと間違って鬼道君って言っちゃいそうだからこれから有人君って呼ぶね』
「俺も間違えそうだ。星羅、と呼んで良いか?」
『勿論。そうだ、明日もサッカー部の練習あったよね。私、今日はお風呂入るよ。また明日ね、有人君』
「ああ。また明日。星羅」
どうしちゃったんだろう。名前を呼ばれると本当におかしくなったみたいになる。日曜日、大丈夫かな…。
「お嬢様」
『わ、私ですか?』
「はい。当日はヘアセットとお化粧の時間がありますので、早めにご支度をお願いします」
『わ、分かりました』
そっか、髪の毛もセットしなきゃいけないし…。お化粧もしなきゃいけないのか…。女の子って大変だな…。
「それでは失礼致します」
『は、はい』
お風呂入って早く寝ないと。明日も部活だし。午前中の部活だから早起きしないと。
ーー翌日
『おはよう、有人君』
「ああ、おはよう星羅」
なんか付き合いたてのカップルみたいになってるんだけど。まぁ仕方ない、これも練習って事で。
『今日も昨日と同じで遅くなりそうなの。待っててくれる?』
「ああ。俺も色々あるからな。そんなに待ちはしないと思う」
『分かった』