第11章 Beat! 〈朝日奈 乃愛〉
まだぼんやりしている頭をなんとかはっきりさせつつ、帰る準備をした。
『今日から軽音部かぁ…』
「どうだったんだ?」
『バンドメンバーも決まったし、バンド名も決まったの!』
「そうか。良かったな」
『そっちは?』
「いつもより、練習が長くなったくらいだな」
『そっか』
なんだか、寝起きであんまり頭がはっきりしないせいか、何時もならポンポン出てくる話題も思い付かない。
「眠いのか?」
『うん…そう、なのかな…?なんか夢で昔の事思い出してさ』
「昔?」
『そ。あたし、昔はすっごい根暗で、小学校では友達できなくていじめられてた。でもある日、男の子がサッカーボールでいじめっ子達をやっつけてくれてね。「強くなれ」って言ってくれた。それから、あたし変わったんだ。人と話すのが怖かった私から、人に積極的に話しかけるようになった』
「お前か…」
『ん?なんか言った?』
「いや」
『それから、全部価値観変わったんだ。人と話すの怖いって思うより、人と話すの楽しいって思った方が人生楽しくなるって気付いた。その子に御礼言いたいんだ。ありがとう、私を変えてくれてって』
「…会えると、良いな」
『うん。そうだ、明日も部活あるんだった。明日からボイトレ受けられるんだよ!楽しみだなぁ』
「良かったな。憧れの軽音部に入部できて」
『うん!あ、あたし此処だから。日曜日、宜しくね!』
「ああ」
日曜日、夕香ちゃんと遊べるんだもんなぁ…。めっちゃ楽しみ…!だけど明日も部活だから、早く寝ないと…。
ーー翌日
『おはようございます。宜しくお願いします!』
「君は私達のボイトレ受けなくて良いよ。但し発声はやっておく事」
『はい!』
「君達のバンドは全員経験者みたいだから、君達自身で練習する事。課題曲は君が体験入部で初めて歌った歌。一ヶ月後に一年のテストをするから、それまでに制度を高めておく事」
『はい!』
テストをするのか…大丈夫かな…。いや、やるんだ。私を信じて集まってきてくれたelenoahの皆の為にも。
『皆、先輩から伝言。一ヶ月後に一年生のテストをするんだって。課題曲は私が体験入部で初めて歌った曲だって』
「皆分かるか?朝日奈が最初に歌った歌」
「は、はい…。聞いてました」
「俺も分かるぜ!」
「俺もだよ」
『それなら大丈夫だね。楽譜は担当楽器ごとに先輩から貰ったでしょ?』
「ああ」