第10章 Become! 〈天晶 瑠璃〉
ーー日曜日
なんだか早く目が覚めたから、仕方なく準備を始めた。デニムのジャケットにブルーのスカート。インナーはシンプルに白にした。遊園地なんて妹達を連れてった位しか思い出がない。
『おはよ〜。ヒロト君』
「おはよう。今日の服、可愛いね」
『あ、ありがとう…』
やばいやばい。相手のペースに流されちゃ駄目だ。主導権は私が握るんだから!
「行こうか?」
『うん』
ヒロト君は白Tに黒のスキニー。シンプルだけど、良く似合ってる。あーもう…緊張するってば!
『最初何処行こうかな』
「無難なところから行きたいね」
『だよね。コーヒーカップとか楽しそう』
「じゃあそうしようか」
コーヒーカップ、一度は回しすぎてみたいって言う願望があったりするんだけど。良いかな。あ、次ちょうど順番だ。よし、回そう!
『ヒロト君!回そう!』
「え?」
『私、コーヒーカップ、目を回す位グルングルンやってみたい!』
「うん!」
なんだかヒロト君もやる気になってるけど、ヒロト君だってそんなに遊園地来てないからかな?お日さま園ではそんなに行けなかったはずだから。
『行くよ!ヒロト君!』
「うん!」
年甲斐も無くすっごい力でハンドルを回した。周りから白い目で見られようが、仕方ない。楽しいんだもん。
『あはは!楽しいね!ヒロト君』
「そうだね」
その後は勿論すっごい目が回ったけど、とっても楽しかった!終わった後もヒロト君と大笑いした。
『すっごい目が回ったね!』
「楽しめたかい?」
『うん!でも、ヒロト君も楽しかったでしょ?』
「うん。こんなにはしゃいだの久しぶりだよ。ちょっと待ってて」
『うん』
未だにちょっと目が回ってるけど、すっごく楽しかった。今までは妹達の面倒を見ることしか頭になかったから本気で楽しんだことなんてなかったから嬉しい。
「かーのじょ」
『私の事?』
「そうそう。君しかいないよ」
『何か用ですか?』
「俺と一緒に行かない?」
『うーん、それはちょっと無理な相談かなぁ』
「どうして?」
『彼氏と来てるから』
「そんなのほっといてさ」
彼氏って言ったら引いてくれると思ったんだけど、しつこいなぁ。
『ごめんねぇ。君と一緒には行けないんだ』
「良いから、行こうぜ」
手を掴まれる。私と行っても楽しくないと思うなぁ。私はヒロト君と一緒だからこんなに楽しめただけで。