第9章 Rise! 〈綾織 星羅〉
「星羅ちゃーん。ちょーっとストップねー」
そこでぷっつりと意識が途切れた。
ーー数時間後
『うう…』
「目が覚めたか?」
『あれ…私、警察に行って、それで…』
「覚えて…いないのか?」
『ご、ごめん…』
警察に行って鬼瓦さんと話した事は覚えている。でもそれ以降は本当に記憶に残っていない。私が、囮になる作戦を提案して…。
『ここ、何処ですか⁉︎』
「俺の家だ。取り敢えず今日は皆帰った」
『そ、そっか…。私、またなんか変な事言ってなかった…?』
「い、いや…」
『言ったんだね…。私、一度変なスイッチが入ると気絶するまで続くみたいで、いつも瑠璃ちゃんにチョップで気絶させてもらってるんだ』
「そ、そういう事だったのか…」
『今日は、さっき果物食べたからご飯はもう大丈夫』
「ああ。そうだろうと思って伝えておいた」
『有難う』
「それじゃあ俺は部屋に」
無意識に、鬼道君の制服の裾を引っ張った。なんだか、人肌が恋しくてつい引っ張ってしまった。もう少し一緒にいたいって言ったら、君はいてくれる?
『あ、あの、えっと…』
「もう少し、話をしたいんだ。此処に居ていいか?」
『うん。ありがとう』
優しいな。鬼道君は。此処何日かは人と殆ど関わってなかったから、ちょっと話したくなっちゃった。
『鬼道君、優しいんだね。一緒にいてくれて有難う』
「いや、俺が好きで此処に居るだけだからな」
『ねぇ、ずっと思ってたんだけど、鬼道君っていつゴーグル外してるの?』
「流石に寝る時は邪魔になるから外すな」
『あの、外した所見たいって言ったら、怒ります…か?』
「だからなんで敬語なんだ…。別に構わないが…」
鬼道君がゴーグルを外した。赤いツリ目。それでも綺麗だと思わずにはいられなかった。
『綺麗…』
「…?」
『鬼道君の目、すっごく綺麗だよ。ゴーグルで見えなくしてるのもったいないくらい。…でも、ゴーグルしてるのは理由があるんでしょう?』
「…ああ。これは、影山から貰ったものなんだ。唯一の…形見なんだ」
『ごめんね、辛い事、思い出させちゃった』
「いや、良いんだ」
『鬼道君にとって、影山総帥は大切な人なんだね』
「そう…だろうか」
『そうだよ。どんな形であれ、君はもう…認めてる筈だよ』
分かってる。到底許されるべきではない行為をした事も。それでも、育ててくれた人には変わりない。