第2章 Start! 〈綾織 星羅〉
「俺は雷門中出身の鬼道有人だ。趣味はサッカーだ。宜しく頼む」
雷門中…確か、去年もその前の年もフットボールフロンティアで優勝している中学校だ。しかも世界大会にまで行った選手もいるらしい。確か、隣の鬼道君も世界大会に行ってたような気もする。実は凄い人だった⁉︎だから緊張を解す方法も知ってたのか。
「自己紹介も終わったな。これから親睦を深める為に時間を取る。隣近所の奴らと挨拶しとけよ」
そうだ。さっきのお礼しよう。お礼位は言える人間になりたい…!
『あ、あのっ…!』
「どうかしたか」
『さっきは有難う。緊張が解れて、ちゃんと返事できたし、自己紹介もできた。有難う』
「いや…綾織、だったか」
『は、はいっ…』
「なんで敬語なんだ…」
つい癖で、強そうな人には敬語を使ってしまう。同い年でも防衛本能でつい敬語を使ってしまうのだ。
『え、えっと、つい本能で…』
「本能…」
『あ、えっと、鬼道君はサッカー好きなんだね。サッカー部に入るの?』
「ああ。約束したからな」
『約束?』
「ああ、五組の円堂と三組の豪炎寺とな」
『そういえば…フットボールフロンティアの世界大会でも優勝したんだよね』
「ああ。色々あったがな」
凄いな…中学校でサッカーに全てを賭けてきたって感じだ。部活に打ち込める人って本当凄いと思う。私は英語研究部だったから、其れ程熱中した記憶はない。
「そういえば、かるたをやっているのか?」
『う、うん。競技用かるたを少し…』
「大会には出ないのか?」
『出たことあるよ。やっぱり、強い人が沢山いて良い勉強になった』
「大会はそういう長所があるからな」
「そろそろ終わりなー。これから新入生テストを始めるぞ。今日はこれ終わったら帰れるから頑張れ」
そうだ。テストがあったんだった。でも中学校の復習だって聞いてたから、多分大丈夫だと思う。国語と数学と英語が試験科目。よし、今回こそ一位取れるように頑張らなきゃ。空欄は作らない。焦らずにきっちり埋めていく。大丈夫、しっかり考えるんだ。罠はないか、合ってるか…うん、多分大丈夫!
「やめ!よし、今日はこれで終わりだからな。気をつけて帰れよ」
「まぁ、そこそこだな」
『やっと終わったね』
「ああ」
「星羅!帰ろ!」
『うん!それじゃあまた明日、鬼道君』
「ああ」
教室を出て親友二人の下へ駆け寄った。