第2章 Start! 〈綾織 星羅〉
静かに教室に入ると、結構な数の視線が集まってくる。やっぱり人が怖い。縮こまりながらも一番前の廊下側の席に着く。一番だから何をするにも最初に呼ばれがち。私は最初が好きじゃない。皆に隠れるようについて行くほうが目立たなくて好き。
「おはよう」
『えっ…は、はい!お、はようございます…』
挨拶をしながら隣に座ってきたのはドレッドヘアにゴーグルを掛けた謎の人。というか…その髪型にゴーグルって校則大丈夫なのかな…。というか…怖い…。隣が真逆こんな見た目が個性的な人だとは思ってなかったから。やっぱり高校デビューってあるのかな…って、この人、何処かで見たことあるような…。あっ…この人、帝国学園のサッカー部のキャプテンだった人…。そういえば周りの人も怖いって言ってたような…。
「皆揃ったな。此れからHR始めるぞ。先ずは自己紹介からだな。俺はこの一年六組担任の五百雀 悠太だ。宜しくな。これから入学式の説明をするからな。よく聞いておけよ」
入学式の説明が始まり、手順が述べられる。私は一番だから六組の中でも一番最初に呼ばれるんだ。ああ、緊張する。立って返事して座るだけなのに、やっぱり人が怖いのだ。
「それじゃあ綾織が初めだからな。頑張れよ」
プレッシャーをかけないでほしい…。余計に緊張しちゃうよ…。
「落ち着け」
『⁉︎』
「先ずは深呼吸してみろ」
さっき挨拶をしてくれたドレッドヘアの男子がアドバイスをしてくれた。その人の言う通り深呼吸をしてみる。ちょっと緊張が解れてさっきよりは動きも柔らかくなったと思う。
『あ、有難う』
「いや、あまり気にしすぎるのも良くない。肩の力を抜くのも大切だ」
『わ、分かった!』
フッと笑って後ろの方に並んで行く。あの人、見た目は怖いけど、中身はそれ程怖くないのかも。確かに次郎くんが怖くないって言ってたような気もする。
入学式も終わって教室の戻ってくる。あの男子のおかげで緊張もあまりする事なく返事をする事ができた。これから生徒の自己紹介だ。
「じゃ、一番の綾織からな。名前、出身中学校、趣味と最後に一言な。」
『は、はいっ!』
そ、そうだ!さっき教えてもらった深呼吸…深呼吸…。よし。
『帝国学園出身の、綾織 星羅です。趣味はかるたです。宜しくお願いしますっ…!』
やった!ちゃんと言えた!感動に浸っていると、隣の彼の番になっていた。