第58章 Resist!〈朝日奈 乃愛〉£
『夕香ちゃんがそんな顔しちゃうと、私も悲しいな』
「ご、ごめん」
『うん、それが良い』
夕香ちゃんは今まで通りマンションに暮らしていて、修也も私もそのまま高校卒業してから住んでいる家で生活している。時々夕香ちゃんも遊びに来てくれるから全然寂しくはない。
『送ってくれてありがとう。夕香ちゃん』
「ううん。ゆっくり休んでね」
『ありがとう』
革命…か。確かに少年サッカーを良い意味で管理する事は必要である。けれど勝敗指示まで出すなんて…これで良かったのか。大会は自分の今までの力を出す最大の機会。それを奪ってしまっているという事にとてつもない罪悪感を抱いているのは確かだ。
『間違ってない…よね…?』
結局、上げようと思っていた結婚式だって出来ずにそのままフィフスセクターのスパイとなった。余裕があると思っていた矢先、急にフィフスセクターが力をつけ始めた。放っておくわけにはいかないという事になって、急いでキャンセルしたものだ。
「乃愛、ただいま」
『修也、お疲れ。革命は…進んでる?』
「このまま行けば、だな」
『雷門が氷のフィールドでも踏ん張っていられるかって事かな』
「間違いなく次はスノーランドスタジアムだ」
『吹雪君が…鍵になるだろうね』
「そうだな」
私達は、雷門に掛けるしかない。だから雷門を壊さなかった。実際、聖帝秘書と名乗っているものの、出来る事なんて雷門の皆を信じる事しか出来ないのだ。
「乃愛…」
『ん?』
「辛いなら…」
『やめろ、なんて言わないで。そんな事言われたら…私のいる意味が無くなる』
存在価値が欲しかった。辛くても、苦しくても良い。そんなのいつか終わるって分かってるから。でも、辛いならやめろ、なんて使えない人みたいじゃないか。嫌だ、そんなの、嫌だ。もう、足手纏いにはなりたくない。
「乃愛…」
『私、まだ役に立てるから!足手纏いになんてならないから!』
「乃愛、よく聞け」
怖かった。また「あの時」みたいに突き放されるんじゃないかって。
「俺が乃愛を好きになったのは、使えるから、役に立つからじゃない」
『…』
「多分理由は口に出せない程多くあるが、好きなった理由は決してそんな事じゃない。俺は、お前が辛い顔を見るのが嫌なんだ」
『辛いのなんて、いつもだったよ。今更…』
「もう少しだけ…ついて来てくれるか」
『うん』
「全て終わったら…」