第58章 Resist！〈朝日奈 乃愛〉£

「朝日奈！」

聞こえなかったフリをしてそのまま学校を出ようとした。

「止まってくれ」

何故かその言葉にピクリと反応して歩みを止めてしまった。

「何をしていたんだ」
『雷門の偵察です。唯一の偵察要員が居なくなってしまったので』
「豪炎寺は何をしている」
『さぁ、存じ上げません』
「お前は…何をしているのか分かっているのか」

分かってる。そんなの。知ってるよ、沢山の少年たちの夢を汚してしまっているという事くらい。でも、どうしても君達に話すわけにはいかないんだ。

『…よ…』
「？」
『分かってますよ！それくらい！』

自分だってこんな事したくなかった。でも、誰かはこうして内部崩壊を企てなければ革命は幾らやっても成功しない。

「お前は…」
『私は、フィフスセクターです。これ以上深入りしない事をお薦めします』

それだけ忠告して本部に戻った。本当、損な役回り。

「お姉ちゃん…」
『夕香ちゃん』
「大丈夫？顔色悪いけど…」
『うん、大丈夫。聖帝は？』
「いつもの所」
『そっか。ありがとう』

夕香ちゃんも大分成長して、高校生になった。でも、小さい時とは違って大人しい子になった。こうして見ると、成長って早いものだなぁと実感する。

『聖帝。偵察が終了しました』
「そうか」
『吹雪士郎が…雷門に』
「…！」
『恐らく、白恋から追い出したので、フィフスセクターに抗いたいのかもしれません』
「分かった。もう良い。顔色が悪いぞ、早く休んだらどうだ」
『ええ、そうさせて頂きます』

なるべく会いたく無かった旧友と再会してしまった。別に嫌いとかそういう訳じゃなくて、バレたく無いってだけで。まさか吹雪君がいるだなんて思っていなかった。アクシデントにアクシデントが重なった結果だと言えるだろう。

「お姉ちゃん、帰ろう」
『夕香ちゃん、待っててくれたの？』
「うん。顔色悪そうだったから、送って行こうと思って」
『心配かけちゃってごめんね。それじゃあ行こうか』
「うん！」

あ、でもこうして無邪気に笑ってくれる姿を見ると、変わらないなって思う。

「お姉ちゃんは…良いの？」
『え？』
「だって、此処にいるの、凄く辛そう」
『そうだね…。でも、私は修也のサッカーへの想いを信じてる。雷門の力を…私は信じてる。だから辛いのも苦しいのも、きっといつか終わるよ』
「お姉ちゃん…」