第57章 Enamour!〈綾織 星羅〉
「大分大きくなったな…」
『だって…有人君いっぱい触るから…』
段々高校生卒業時のブラじゃ覆う面積が足りないと言うか…。
「大学に行っている時に口説かれたりはしないのか?」
『でも、イタリアってそういうの日常茶飯事でしょ?あしらい方にも慣れてきちゃった』
「という事はされているのか…」
『…?』
「いや、何でもない」
講義が終わると良く口説かれるけど、夫が居るので…って断ってる。びっくりするだろうな。22で、しかも大学在学中で旦那さん居るだなんて。
『ん…』
「随分と凝ってるな」
『あはは…最近ずっと下向いてる事多かったから…それでかも…んっ…』
「どうだ?気持ち良いか?」
『うん。ありがとう。それじゃあそろそろお風呂入ろっか』
「そうだな」
なんだか、いつも以上に労ってくれてる…。でも、高校の時もあるし、心配になるのは無理もない。私と有人君が逆の立場だったら、間違いなく私も有人君と同じようにしていただろうから。
「しかし、妊娠したとしたら思い当たる節が無いな…」
『もしかして…有人君覚えてない?』
「ああ」
『有人君、一回酔っ払って帰って来たでしょ』
「ああ…そうだな。フィディオ達にうまく乗せられてしまった」
『その日…帰ってきた途端に…その…』
「…」
完全にやってしまったって顔してる。危険日だよって伝えたんだけど、酔っ払ってて意識なかったのかそのまま続行と言いますか。私もその後は疲れて寝てしまって、後処理するのを忘れてたのが悪いんだけど…。
「すまない」
『謝らないで。結果的にこうして大事な子供を授かれたんだから』
「そうだな」
『でも、強いて言うなら、もう少し二人の時間が欲しかったかな、なんて…』
「なら、これから沢山時間を作ろう」
『でも、無理に時間を作ろうとしちゃ駄目だよ?私、有人君のサッカーやってる姿を見るの、大好きだから』
初めて君の試合を見た時は本当に驚いちゃった。だって、あんなに怖そうな顔してペンギン操ってるんだもの。
「そ、そうか…?」
『うん。こんなに好きになるんだったら、中学の時からちゃんと見てれば良かったって思ってしまうくらい』
「生憎、その時はまだ俺の片想いだったな」
『私、その時はずっとかるた一筋だったから…サッカー部が強いのは知ってたけど、そんなに興味なくて…』
「きっと俺に見向きもしないだろうとは思っていた」