第56章 Marry!〈天晶 瑠璃〉
「そうだぞ!」
前を見ればフラワーガールの紫とリングボーイの琥珀。お願いしたら快く引き受けてくれたから良かった。
『ありがとう、紫、琥珀』
「それでは、入場して下さい」
係の人に頷いて、まずは一歩踏み出した。目の前には楽しそうに花を撒いていく紫がいる。私、ここまで来れたんだ。本当に良かった…。
「さぁ、行きなさい」
『はいっ!』
おじさんの腕から、ヒロト君の腕へとバトンタッチ。愛しい旦那様への元へと辿り着いた。
「綺麗だよ」
『もう…良いから』
式に集中してと肘で地味に小突いた。そして…いよいよ誓いの言葉。神父さんの声が式場内に響き渡った。
「はい、誓います」
私は、ずっと君と共に生きていく。これからもずっと、愛してるよ。
『はい、誓います』
「それでは誓いのキスを」
ベールが取り払われて、はっきり顔が見える。
『緊張してるね』
「だって、これから夫婦だからね」
分かってる。私だって緊張してない訳じゃ無い。でも、大丈夫だよ。君ならきっと大丈夫。
『んっ…』
優しく触れた唇から、暖かな想いが伝わってくる。
『ふふっ…』
いつもより緊張してたからか、少し笑っちゃった。その後は無事に式を終えて、次は披露宴。
『じゃあ、着替えてくるね』
「ああ」
披露宴用に選んだドレスは、空色のプリンセスラインドレス。胸元には沢山の小花があしらわれていて、胸以外の上半身は透けている。
『終わったよ〜』
「瑠璃の髪の色に良く似合ってる」
『ちょっと色に意識して選んでみたんだ』
「綺麗だよ、瑠璃」
『ありがと』
披露宴、星羅ちゃんの時はそりゃあ大惨事になってたからなぁ。今回はどうなるんだろう…。
「披露宴、楽しみだね」
『前回みたいにしっちゃかめっちゃかにならないかが心配なんだけど…』
「それはどうだろうね…」
「おい!手を挙げろ!」
え?え?何⁉︎強盗⁉︎
『えっ…⁉︎』
「瑠璃!」
「へへ、此奴は貰ってくぜ!」
待って…この声、何処かで聞いたような…。覆面かぶってるから分からないけど…。
『ヒロト君!』
手が届かなくて、そのまま、連れ去られてしまった。と言っても、連れてこられたのは披露宴会場の控え室。もしかして、いやもしかしなくても演出⁉︎
『その声…綱海君、で合ってる?』
「おー?良く分かったな!ちょっと静かにしててくれよ!」