第56章 Marry!〈天晶 瑠璃〉
「それから、このお日さま園に兄さんによく似た子がやってきた」
『それがヒロト君ですよね…』
「ええ、そうよ」
ヒロト君がこの事を話さなかったのは、きっとどこか遠慮していた部分があったのかもしれない。
『私は、逆に今まで姉として頑張ってきました。下には6人の妹と弟達がいます。親が居なかったから、私がしっかりしなくちゃって好きな事を諦めて節約したり、部活もやりませんでした』
「確かに、そう思うのも無理ないわ」
『でも、そんな自分を変えてくれたのは間違いなくヒロト君であって…だからこそ、好きな事を今こうしてやれているんです』
「良かったわね。貴方がしたい事をするのは本当に大切な事なのよ」
『今になったら、その言葉の意味が凄く良く分かります』
今、心置きなくバレエができるのは、初めてちゃんと話した時にヒロト君が提案してくれたからだと思ってる。あのまま君と会わなければ、今でも私は誰にでも遠慮したままだったんじゃないかな。
「さて、大体できたから皆を呼びましょうか」
『はい!』
ーー数ヶ月後
「瑠璃、行くよ」
『あれ?今日何かあったっけ…?』
「ウエディングドレスを選ぶ予定だった筈だけど」
『うわぁ…!忘れてた!今すぐ準備する!』
「私も行って良いかしら」
「勿論、姉さんが来た方が安心して選べるよ」
私そんなイレギュラーに走りますかね…?というか、早く準備しないと!もう、完全に忘れてたよ…。
『ごめん!』
「じゃあ、行こうか」
車に乗って目的地に向かった。でも、大体どういうの着たいかは決めておいた方が良いな。星羅ちゃんは間違いなくプリンセスラインのドレスが似合ってた。私は…Aラインかなぁ。
「着いたね。行こうか」
「どういうのが着たいかは決まっているの?」
『はい。Aラインかなって』
「良いわね。それじゃあ見に行きましょうか。ヒロトは待ってて」
「えっ…」
『うん、その方が良いと思う』
「多分、長くなるから、飽きるわよ」
そう、人生に一度のウエディングドレスはきちんと選びたい。だからきっと長くなってしまう。
「分かったよ…」
『それじゃあ、行きましょうか!瞳子さん!』
「ええ」
取り敢えず、Aラインが集まっているドレスの所を見に行くけれど、沢山の種類がある訳だから、すぐには決められないだろう。
「袖で絞りに行くのも良いんじゃないかしら」
『確かに…』