第56章 Marry!〈天晶 瑠璃〉
高校を卒業してすぐの春。私は、ヒロトくんと結婚します。
「遂にお前達も結婚か」
「些か気が早いんじゃないのか?」
「私は、当人達が決めた事なら何も言わないわ」
『瞳子さん』
「一応お金に余裕はあるから盛大に…」
『駄目ですよ。瞳子さん』
「あら、良いの?」
『私達が頑張ってきたのは、自分達が得する為じゃなくて、ここの皆に少しでも笑顔をあげたいからなんです。だからそんなに贅沢するつもりは…』
「瑠璃。少し待ってて」
『…?』
瞳子さんに言われるがままにその場に立ち尽くした。何かあるのだろうか。
『えっ…皆、どうしたの?』
遊んでいたはずのお日さま園の皆がわらわらとやってきた。
「皆、瑠璃の特別綺麗な姿、見たいわよね」
「見たーい!」
『えっと…これは…』
「つまり、ここの事を気にせず、やりたいようにやりなさいって事よ」
『い、良いんですか…?』
「ええ、ね?ヒロト」
「ああ、ウエディングドレスを着ないって言った時はびっくりしたけど。瑠璃、着てくれる?」
『…分かった。着ます!』
瞳子さんの押しによって結婚式を開く事に決まり、すぐにプランニングが始まった。
「瑠璃の場合はバレエをやっているからブライダルエステは要らないくらいね」
『そうですかね?』
「ええ、綺麗よ」
瞳子さんに言われると、普通に星羅ちゃんや乃愛ちゃんに言われるのと少し違ってドキっとしてしまう。
「本当に、あなたはいつになってもウブね」
『そ、そんな事無いですよっ!』
「ヒロトもこんな可愛い子貰えて良かったわね」
『も、もう!瞳子さん!』
ワイワイしつつも皆のお昼ご飯を作る。前はずっと瞳子さん一人で作ってたみたいだから、私が来てくれて助かったと言ってくれた。
「楽しみにしてるわ。瑠璃のウエディングドレス姿」
『そんな良いものじゃ無いですよ〜』
「だって私にとってはもう妹のようなものだもの」
妹、か…。今までずっと姉として頑張ってきた。皆の為に色々と我慢して。辛いこともあったけど、全部兄妹達の為ならって必死に頑張ってきた。
「私も…本当は妹だったの」
『え…?でも、ヒロト君の…』
「ヒロトは、後から貰った名前よ。本当は、私の兄がヒロトという名前だったの」
『そうだったんですか…』
「でも、外国にサッカー留学に行っていた間、事故に巻き込まれて…そのまま亡くなってしまったの」