第55章 Suggest!〈朝日奈 乃愛〉
あ、照れてるな?こんなにストレートに伝えた事無かったからなぁ…。
『好き』
口にすれば嬉しくなる。心があったかくなる言葉。
「愛している。乃愛」
やばい…!そう来るとは思ってなかった。急に体温が上昇する。
『だ、誰も居ないから良いけどぁ…!』
「さっきまで散々言ってただろ、お前も」
『う、うるさい!』
照れ隠しに少しそっぽを向いた。
「お前、二度と合コンとかには行くなよ」
『い、行かないよ!今日は強引に誘われたんですぅ〜!』
「知ってる」
そろそろ水族館の出口だ。久しぶりの水族館は楽しかったなぁ。また、今度は子供が出来たら、かな?
「帰るか」
『うん』
家に向かって歩いていると、昔修也と夕香ちゃんと遊んだ公園が見えた。
『あ、懐かしい』
「初めて三人で遊んだのはここだったな」
『ちょっと寄ってこうよ』
「ああ」
もう夜だから暗いけど、どこか温かみがあって、安心できるというか。
『ここで修也が狸寝入りしてたんだよ。もう三年も前だけど』
「実際何かしてくれないか待ってたからな」
『うーわ、下心丸見え』
本当はあの時自分の方が心臓バクバクでどうしようかと思っちゃった。まさか、狸寝入りしてるとは思ってなくて普通に歌歌っちゃったんだっけ。
『あの時、私の前で寝てくれた時、ちょっとほっとしてた。だって、安心できないとあんなに寄りかかれないでしょ?だから、ちょっとは関心持ってもらえてるのかなって嬉しくなった』
「乃愛」
『ん?』
「手を出してくれ」
『え、こう?』
「ああ。あと、目を閉じてくれ」
『んん?うん』
言われた通りに手を出したまま、目を瞑った。するとひんやりとした感覚が指を伝う。
「もう開けて良い」
『うん』
目を開けると、左手の薬指にピンクゴールドの指輪がはめられておる。
『嘘っ…』
「乃愛。俺と、結婚してくれ」
『覚えてて、くれたの?』
「ああ」
キラキラと輝くそれを優しく撫でた。まさか、今プロポーズされるなんて思ってなくて…準備とか全然してなかった。
「返事を聞かせてくれ」
『喜んで…!』
嬉しくって涙がボロボロ溢れてくる。高校生の時に交わした約束を覚えててくれたのが何より嬉しくて。
「泣くな」
『これだけは無理…』
こんなに泣いたのは本当に久しぶりで、嬉しい気持ちが溢れてどんどん涙が溢れてくる。