第55章 Suggest!〈朝日奈 乃愛〉
ーー三年後
『やっと四年生〜』
「あと二年か…」
『ごめんね、大学卒業まで待って貰っちゃって』
「いや、それより大事な事がある」
『ん?どうしたの?』
いつにも増して真剣な顔だった。凄く思い詰めてる。
「俺に、着いてきて欲しい」
『…どういう事?』
「今、中学サッカー界がある組織に支配されようとしている」
『それを救いたいって事ね』
「ああ。その為に、俺はその組織の内部事情を知る必要があるんだ」
『で、その組織に私も一緒に入って欲しいと』
「そういう訳だ」
サッカー馬鹿の修也の事だ。きっと早く救いたくて仕方がないんだと思う。でも、プロポーズを受けた時からずっと着いていくと決めていた。
「もう一人、協力を頼んでいる」
『もう一人…?』
「虎丸だ」
『成る程、後輩だもんね』
わざわざ敵陣に赴くという事は、味方にこの事を知られてはならない。つまり、二人とも連絡は取れなくなる。
『で、その組織の名前は?』
「フィフスセクターだ」
『フィフスセクター…』
「そのトップの名は、千宮路 大悟」
『私はその組織に入ったとして、どうゆう役割を果たす訳?』
「聖帝秘書…?」
『もしかして聖帝って…修也?』
「ああ」
『うわ…めっちゃ中二…』
「言うな。咄嗟に考えたのがこれだったんだ」
『ボキャ貧具合が伺えるわ…。千宮路って人も良く笑わなかったね』
でも、その組織の聖帝になると言う事は、つまり今のリーグからも抜ける事になり、それは引退を指す。
『良いの?まだフィールドに居なくて』
「俺は十分だ。それよりも、サッカーの未来を照らしたい」
『分かった』
その意思を汲み取って、敢えて何も言わなかった。大丈夫、着いていくよ。何があったって。
『ねぇ修也。これから絶対に辛い事が起きる。革命とは則ちそう言う事を表しているから。でも、一人じゃないっていうのは覚えていて欲しい。何の為に私がいるか分からないでしょ?』
「ああ」
『修也。先に…結婚式開こう』
「良いのか?卒業まで待たなくて」
『その方が、革命頑張れる気がしない?焦ったいままでいるよりは全然良いと思うんだけど』
「そうだな」
『私も精一杯頑張るから。だから、諦めちゃダメだよ。ちゃんと私を頼って』
修也の額にコツンと自分の額をくっつけた。もう、一人じゃない。孤独じゃない。どんなに辛い事があっても絶対側にいるよ。