第54章 Graduate!〈綾織 星羅〉
「分かった。約束しよう」
『はい、お願いします』
「お二方、ご準備は宜しいでしょうか」
『はい』
「それでは間もなく扉を開けますので、合図が出たら歩き出して下さい」
『分かりました』
もうすぐ、始まる。もうすぐ、恋人から、奥さんへ。
「それでは、どうぞお進み下さい」
『はい』
お父さんと一緒にヴァージンロードを歩く。少し前にはゴーグルを外した君が待っている。一歩一歩丁寧に、一年を踏んでいく。高校生になってすぐ両親を亡くしたけれど、それでも有人君や皆のお陰で此処まで来ることができた。これからは、どんな時でも君と一緒に…。
「さぁ、行くんだ。星羅」
『…はい!』
お父様の腕から添えていた手を離して、有人君の腕にそっと添えた。その後、賛美歌を皆で歌い、神父さんが聖書朗読・祈祷を行なって、遂に誓約の場面。
「死が二人を分かつまで」
少しゾクっとした。私達は死如きで別れたりなんかしない。一緒だよ、ずっと。君を一人にはしないから。
「誓いますか?」
「はい、誓います」
もう一度、同じ言葉が読み上げられ、神父から問いかけに答える。
『…』
深呼吸をした。はっきり、言おう。そしたらきっと前の自分から変われる気がするから。
『はい、誓います』
「それでは、誓いのキスを」
有人君がベールを上げた。ベールで遮られていた視界が一気にクリアになる。
「星羅」
『…うん』
ゆっくりと、優しいキスが降ってくる。長い様で短い時間が私達の中を通り過ぎていった。
『ふふ』
顔が離れた後、指輪の交換をする。左手の薬指に、ダイヤが遇らわれた綺麗な指輪が輝いていた。
「それでは結婚証明書に署名を」
書面に自分の名前をサインし、私達と神父が退場して、式は終わった。
『ふえぇ〜!終わったぁ…』
「これから披露宴だぞ」
『でも、ちょっと違うドレスを着られるなら良いかも』
「楽しみだな」
楽屋に戻ってきて、今度はお色直しの時間。披露宴用に新しいドレスに着替えます。
『それじゃあ、ちょっと着替えてくるね』
「ああ」
有人君の元から離れて更衣室に行く。披露宴で着るドレスは星をイメージしたドレス。ベースの色は夜空の色。上半身はゴールドのドットが星を表している。
『有人君、出来たよ』
「お前らしいドレスだな」
『星羅だけに、星をイメージしてみました〜』
「星座が好きだったな」