第54章 Graduate!〈綾織 星羅〉
「努力の結果だな」
『私の事を…愛してくれて有難う』
「それはこっちの台詞だ」
『ああ…何だか涙出てきちゃいそう…』
「まだ早いぞ。式中迄に取っておけ」
『…うん!』
勢いで涙を引っ込めて満面の笑みを有人君に見せた。
『有人君のタキシード姿、すっごく良く似合ってるよ』
「お前の隣に立つにはそれ相応の格好をしなければな」
『でも、今日位はゴーグル外して欲しいかな』
そう言いながら、背伸びをしてゴーグルをゆっくり外した。紅玉の瞳が優しく輝きを放っている。
「済まない。先程のものを訂正して、これが最後のキスにして良いか」
『メイクが取れない程度にね』
「ああ」
優しく触れる温度が、とても心地良くて。ああ、これから貴方の妻になるんだって、急に思い始めた。
「そろそろ撮影に行くか」
『えへへ…楽しみだなぁ』
すると、ノックの音が部屋に響いた。係の人かな?
『どうぞ』
「星羅!」
「私達もファーストミートしたいなぁって」
『乃愛ちゃん…瑠璃ちゃん…!』
「流石だな、鬼道」
「とても似合ってるよ。鬼道君」
「豪炎寺、ヒロト」
これで六人が揃った訳だ。まだ瑠璃ちゃん達も着替えていない様で、完全に私服だった。
「星羅。凄く綺麗だよ。輝いてる」
『有難う。乃愛ちゃん』
「星羅ちゃん、凄く似合ってるから、自信持ってね!」
『うん!』
「それじゃあ私達は着替えてくるね。二人はこれから撮影、だっけ?また式中でね」
『うん、来てくれて有難う、皆』
皆が来てくれたから、肩の力も少し抜けたし、やっていけそうな気がする。
「行くか、星羅」
『うん』
写真撮影を終わらせて、リハーサルも無事終わった。後は本番だけ。お父さんには、私と一緒に待機して貰っている。
「まさか、こんなに綺麗だなんてな」
『私、凄くお父様に感謝してるんです。有人君と巡り合わせてくれて、有難うございます。今になって思うんです。有人君のお嫁さんになれて本当に良かったって』
「私の勝手な都合で有人との婚約を解消してしまった事があったね」
『ええ』
「本当にすまなかった。やはり、私はいつも利益だけを考えてしまう」
『いいえ。人の上に立つのであれば、お父様の考えは決して間違っていません。でも…有人君の声を聞いてあげて下さい。有人君、一人で我慢してしまう癖がありますから。偶には相談に乗ってあげて下さいね』