第54章 Graduate!〈綾織 星羅〉
「ヒロト達が来たのは驚いたな」
『偶々デートしてたんだって』
「あいつららしいな」
『そうだね』
今は、貰った写真を互いのスマホのロック画面にしている。いつも見る度にニヤニヤしてしまうのは内緒。
「今日も帰ったらイタリア語の練習だな」
『何か、この時期が人生で一番大変な時期かも…。イタリアの大学入試に向けて勉強もしなくちゃいけないし…結婚式の準備もしなくちゃいけないし…』
「仕方ないな。やれる事を一つずつ片付けて行こう」
『よし…私も頑張らないと!せめてあっちに行っても困らないレベル位にはなりたいから!』
「その意気だ」
『うん!』
やると決めたからにはやるんだ。大丈夫。出来るよ。私達ならきっと。
ーー結婚式当日
「いよいよ当日か…」
『今日も送っていただいてありがとうございます』
「いえ。これが私の仕事でございますから!」
いつも送り迎えをしてくれている人にお礼を言って、式場まで向かった。
『今日で恋人卒業だよ。有人君』
「だが、まだ卒業はしていない」
『…?』
「着いたな、行くか」
『あ、うん』
車から出て、式場に入ろうとした時のことだった。
「星羅」
『ん?』
「恋人として最後のキスだ」
『へぁっ…んんっ…!』
「さぁ、行くぞ」
す、凄い不意打ち…。でも、後ろから見るからこそ分かるけど…有人君も耳真っ赤なんですけど…。カッコつけちゃったから照れてるのかな?
『ふふ…』
あ、また耳が真っ赤に…。ごめん、笑いを堪えきれなかった…!
『じゃあ有人君、また後でね』
「…ああ」
まずはヘアメイクをスタート。折角だから、長い髪を活かしてラプンツェルの様な編み込みスタイルにする事にした。花冠も作ってもらって、凄い豪華だ。
「とてもお綺麗です…!」
髪型だけでもう凄くて、言葉も出なかった。花がとても綺麗で、有人君がプロポーズの時に送ってくれた様な真っ赤な薔薇が黒い髪に良く映えていた。
『す、凄いです…!』
「喜んで頂けて何よりです。それではお着替えの準備をして参りますので、今の時間になるべくお化粧室に行かれる事をお勧め致します」
『分かりました』
係の人の言う通りにお手洗いを済ませて、元いた部屋に戻ってきた。これから着替えるのか…。体型は本当に頑張ってキープしてきたし大丈夫だと思う。
「お着替えの準備が出来ましたので、此方へどうぞ」