第54章 Graduate!〈綾織 星羅〉
確かに、私達は高校一年生の時から結婚すると決まっていた。最初は混乱していたし、葬式も全て行ってくれるという事だったから、二つ返事で結婚を認めた。その後、別の財閥が関与したという事もあって、結婚の話が一度破綻になってしまったけど、でも、またこうして元に戻った。
『嬉しかったなぁ』
「何がだ?」
『有人君がちゃんとプロポーズしてくれた事』
「も、もう良いだろう」
忘れもしない。プロポーズされたのは私の誕生日。9月2日だった。
『デート?』
「ああ。久し振りに待ち合わせをしてみないか」
『良いけど…急にどうしたの?』
「いや…」
『?…分かった。何時に集合?』
「きっかり12時だ」
『分かった!じゃあその時間に着く様に用意するね』
いつも家から一緒に行くのに、待ち合わせなんて珍しいなってその時は思っていた。驚いたのはもっと凄いことで。
「来たか」
『有人君?』
丁度12時に待ち合わせ場所に向かった。待ち合わせ場所は周りに人が居なくて、海の見える綺麗な場所だった。
『有人君、どうしたの?』
「一度しか言わないから、聞いて欲しい」
『うん?』
いきなり後ろから赤いバラの花束が出された。
『え?え?』
「改めて言う。俺の…妻になって欲しい」
『へっ…』
いきなりだったから、全然準備してなくて。みるみる熱を帯びていく頬を手で覆った。しかも、余りに嬉しくて涙がボロボロと溢れてくる。
「な、泣く程嫌だったか…?」
『違うの…!嬉しくて…!勿論です…!喜んで、あなたの妻になります』
パシャリ
『へっ⁉︎』
「ごめんね〜星羅ちゃん。撮っちゃった」
『る、瑠璃ちゃん?』
「やぁ、鬼道君」
「ヒロトまで」
「さっきのプロポーズのシーン、写真に残しておきましたー!」
『え、えぇええ?』
見事にスマホに保存されている。どうやらスマホをくっつけて撮影した様で、花束を差し出す有人君を基山君が、驚いた私の姿を瑠璃ちゃんが撮ってくれていた。
「これ、後で送るね〜」
『あ、ありがとう』
「じゃあ、二人とも楽しんで」
何か、凄い偶然と言えば良いのか何なのか…。でも、撮ってくれてたのはとても嬉しかった。
「変な雰囲気になってしまったな」
『あはは…それもそれで良いんじゃないかな〜?』
「そうだな」
結婚指輪も一緒に貰って、また更に泣いてしまったんだっけ。本当に嬉しかった。