第54章 Graduate!〈綾織 星羅〉
着々と結婚式の準備が進む中、今日はウエディングドレスを選びにきた。
『ウエディングドレスと言っても、沢山の種類があるんだよね…』
「まずは大まかにどれを着たいのか絞った方が良いかもしれないな」
『どうせなら、私はプリンセスラインのドレスが着たいなぁ。女の子の夢だし』
「なら、あっちの方じゃないか?」
『うん!』
やっぱり人気のプリンセスラインのドレスは種類も数も豊富だった。長袖の物も有れば、半袖の物もあったり、オフショルダーやノースリーブ。本当に沢山の種類があった。
『やっぱりいっぱいあるね…』
「…」
有人君はある一点だけを見つめて考え込んでいる。その方向はビスチェタイプで、綺麗なシルクの素材が上品さを物語っている。
『有人君はこれが良いの?』
「い、いや…これは俺の願望であって、着たいのはお前が選べば…」
『じゃあ、これ着てみるね』
「お、おい星羅!」
『すみません。これ、試着できますか?』
「はい。それでは、此方へどうぞ」
有人君が選んだ物を持って試着室に入った。元からシェイプアップしようとして結構体型は絞ったから、普通に入ると思うんだけど…。
「丁度ピッタリなサイズですね!新郎様にもお見せしますか?」
『いえ。取り敢えず今日は見せなくて大丈夫です』
「分かりました。それではまたお手伝いしますね」
『はい。ありがとうございます』
ドレスを脱いで試着室から出てきた。入った時と同じ格好で出てきたのに驚いたみたいで、尚且つちょっとがっかりしている。
「見せてくれないのか?」
『当日のお楽しみです!』
一番着飾った時の私を、君には見てほしいから。まだ見せない、というか見せたくない、かな。この体型をキープできる様に頑張らないと。
『今日は帰ろっか。有人君』
「そうだな」
ちょっとしょんぼりしてるの。知ってるよ。ごめんね、でも絶対当日に綺麗って言ってほしいから言わない。
『ちょっと拗ねてる?有人君』
「い、いや…別に…」
『バレバレだよ。有人君』
「…」
ポリポリと頬を掻く姿も、顔真っ赤にして照れてるところも。これは、私だけが見られる姿。ちょっと優越感。
『ふふ、大好きだよ。有人君』
「星羅…」
『当日まで、もうちょっと待ってて欲しいな』
「…分かった」
まだちょっと拗ねてる。可愛いなと思いつつ、改めてプロポーズされた日の事を思い出した。