第51章 Envy!〈朝日奈 乃愛〉
「乃愛は気付いていないかもしれないけど、高校に入ってから豪炎寺君は良く笑う様になったんだ」
『でも、それは私によるものじゃ無いかもしれない…』
「間違いなく乃愛によるものだよ」
『…』
「確かに高校一年の四月から半年位は中学生の時と変わらなかったけど、ある時から本当に幸せそうに笑う様になったんだ。確か文化祭終わってすぐだったかな?」
丁度付き合った時期だ。覚えてる。空港で修也が物凄い必死になって追いかけてきてくれた事。
「ちゃんと話していないんだろう?」
『うん…』
「乃愛…!」
「ほら、お迎えが来たみたいだ。ちゃんと話してあげないと、豪炎寺君だって分からないと思うよ」
先にアフロディが立ち上がった。その間にまだ少しだけ混乱した頭を整理した。多分、これで大丈夫な筈だ。
「乃愛」
『さっきは、ごめんね。私、頭混乱してた』
「ああ」
『あんな事言っちゃったのは…。自分が、駄目だなって思っちゃったんだ。私じゃ、修也を笑顔に出来ないって思っちゃったから』
「その辺はアフロディから聞いただろ」
『うん。血迷った』
「血迷ったってお前な…」
『本当だもん…』
実際、最初の嫉妬どうこうからちょっと混乱してたのかも。もう少し冷静になっときゃ良かった。
『最近、ちょっと女の子にモテる様になったでしょ?嫉妬…しちゃった』
後になって気付く、しょーもない嫉妬心。なんかもう、本当申し訳ない。
『ほんと、下らない嫉妬心…』
「俺は嬉しいけどな」
『は…?』
「嫉妬して拗ねてる所が可愛い」
『…うっさい』
いきなり修也が立ち上がった。顔を上げると手を差し出してくれている。
「行くか」
『あっ…夕飯…!』
「夕香はもう食べてるみたいだ」
『そっか…良かった…』
「食べて帰るか」
『うん』
高校生のお財布に優しい、某ハンバーガー店で食べて帰る事にした。
『にしても、良く食べるね』
「育ち盛りだからな」
『部活辞めたら太りそう…』
「…!」
『何その今気付いたみたいな顔』
良く聞く話だ。部活辞めると太るみたいな話。
『でも、夢がサッカー選手なら話は別かもね』
「なら問題ないな」
『そんな事だろうと思った』
修也なら本当になりそうだ。というか大丈夫だって信じてる。
『世界に…連れてってよね』
「勿論だ」
ムードもへったくれもないこの場所でやるっていうのもあれだけど。