第51章 Envy!〈朝日奈 乃愛〉
どうしようか…。何が良いかな。プレゼントする機会なんてそうは無いしなぁ。去年は直感で、とか星羅に言ったけど、あのアドバイスの為にならなさを今思い知った。
『ん?』
そうだ、私の彼氏は運動部。ならば、運動部ならではの物を送れば宜しいのでは?タオルとか良いかもな。
『どうせなら肌触り良いの選びたいよね』
タオルが良いな。今使ってるタオル、結構古いし…。お母様とか夕香ちゃんに貰ったものなら長く使ってるのは頷けるけど、それでもいつかは寿命が来る。だからまぁ、予備として送るのはありかもしれない。
『あとはお菓子、かな』
マカロンだったら意味的に送ってもオッケーな筈。マシュマロとかグミとかは間違っても送ってはいけないらしい。
「あれ、先輩」
『お、君かぁ。君も寄り道?』
軽音楽部の後輩の鮫川 光輝君。人懐っこいと言うか、一言で表すと犬みたいな感じ。
「マカロン、作るんですか?」
『うん』
「確か、マカロンって送るなら特別な存在って意味ですよね?彼氏ですか?」
『え…分かるんだ?』
「まぁ…なんとなく」
ちょっと機嫌が悪そうだけど、私何かしたっけ?
『私、何かしちゃった?』
「いえ、別に」
『なら良いんだけど…。何か悩みがあったら遠慮無く相談してね』
「先輩…好きです」
『え?』
この目を私は知っている。アフロディと同じ目をしている。この子、本気だ。
『…ごめん』
「知ってました。彼氏がいるって言うのは」
『その人の事、どうしても好きだからさ。ごめんね…君の事、そういう目で見れないよ』
「すみません。変な雰囲気にしちゃいましたね」
『ううん。私こそ、ごめん。私、そろそろ学校に戻らなくちゃ。じゃあね、また明日』
気まずい雰囲気を抜け出したくて、その場を後にした。レジで会計を済ませて、店を出る。自動ドアを潜った瞬間に見覚えのある顔が見えた。
「先輩。少しだけ俺に付き合って下さい」
『ごめん、それはできない』
「少しだけですから」
『駄目だよ。決めてるから』
「他の男と歩かないって事ですか?随分と束縛する彼氏なんですね」
『違うよ。仮に私の彼氏が他の女の子と歩いてるの見たらちょっとモヤモヤするだろうから、私はしない様にしてるだけ』
「見上げた精神ですね」
皮肉でも言いたいかの様に嘲笑った。別に良いんだ。笑われたって、自分がされて嫌な事はしたくない。