第50章 Consist!〈綾織 星羅〉£
『ゆ…と君…だよね…?』
「ああ」
何故だか涙が出てきてしまう。笑顔を…むけてあげたいのに。
「待たせたな」
『待ってた…!』
「もう、大丈夫だ」
こんなに安心できるのは、君の腕の中だから?それとも束縛から解放されたから?
「帰るぞ。星羅」
『に、荷物は…?』
「明日、もう一度取りに来よう。今日は俺の部屋で寝ると良い」
『え…良いの…?』
「ああ」
もう一度、鬼道家に戻れるんだ。
「行くぞ」
『うん…!』
外に出ると、いつもの送迎係の運転手さんがいた。
『ありがとうございます…!』
「お嬢様の幸せそうな顔が見れて何よりでございます」
今年度になって初めて夜景が綺麗に見えた。
「半年もかかってしまった」
『ううん。こうして迎えに来てくれただけで幸せなの』
「警戒心を解くのに時間がかかってな。さっきの様にぽろっと口から証拠が出てくるのを狙っていたんだ」
『成る程…』
「あの時、お前に俺の事をどう思ったと聞いた時、誤魔化しただろう」
『だって…』
「あれで分かった。お前は俺をはっきり嫌いとは言えないし、好きとも言えない。だから俺は誤魔化すだろうと踏んでいた」
『分かってたんだね』
「勿論だ」
やっぱり、バレちゃうんだよなぁ。昔から嘘は吐けないタイプだったし。
「着いたな」
『なんか…久しぶり感が強くて…』
「半年も空けていたからな」
『戻って…きたんだね…』
「ああ」
そのまま有人君の部屋に向かった。半年前と何も変わらない。
「もう一度聞いて良いか」
『え…?』
「高校を卒業したら、イタリアに着いてきて欲しい」
私は、君の力になりたい。側にいて精一杯のサポートをしたい。だから…
『はい…!』
「その言葉を待っていた」
『着いていくよ。何処へだって』
「頼もしいな」
そりゃそうだよ。短い間だったけど、君に見合う人になろうって頑張ってきたんだから。
『私からもお願いして良い?』
「ああ」
『今夜は寝かさないぜ?』
これは君への宣戦布告。もう一度私を手放したら…許さないよ…?なーんて。
「ほう…?」
『えっ…』
「残念だったな。丁度こっちから願おうと思っていた所だったんだ」
『え、あの…ちょ…!』
「夜は長いぞ。星羅」
軽ーく言ったつもりだったのに〜!どうしてこうなっちゃったの⁉︎いつの間にか押し倒されてるし…。
「始めるぞ」