第50章 Consist!〈綾織 星羅〉£
『え…?』
「あら、何かしら」
これって…スピーカーにしてるの?有人君と万里小路さんの会話…?
「婚約を解消して欲しい」
「何万という人の生活をドブに落とす気ですの?」
「いいや。今から取引をする」
取引って…何?何をするつもりなの…?有人君…。
「星羅をあの屋敷から追い出せ」
「まぁ、ついに私の事を好きになって下さったのね!」
これは…近況報告なの?こんな事を私に伝える為に電話してきたの…?もう、諦めろって事…?
「嬉しいですわ!元々、当初の目的はあの女を潰す事でしたの!これで…あの女につけていた盗聴器も外せますわ!」
わ、私盗聴器付けられてたの⁉︎
「これで確実だな」
「ええ!これで私達は誰にも邪魔されない…」
「いいや。そうじゃない。鬼瓦刑事!」
「やあ、お嬢さん」
「あ、貴方誰ですの⁉︎」
「今のは全部録音させてもらった。そして脅迫罪で逮捕する」
まさか…これを準備する為に…半年もかけてくれていたの…?
「勘違いしない様に言っておく。これから一生、お前を愛する事も、性的に見る事もない。俺は、星羅しか愛せない」
「どうして…どうしてですの!さっき…」
「好き、とは一言も言ってない。寧ろ俺はお前を軽蔑している。星羅は鬼道家に入って、世話してもらっても、いつも感謝を忘れなかった。お前は権力を振りかざして、やって貰うのも当たり前。そんな奴を、俺が好きになれるとでも?」
声が…怖かった。軽蔑を通り越して、忌み嫌っている様にさえも感じる。
「星羅。聞こえているか」
『え、うん…聞こえてるよ…』
「見苦しいものを聞かせてしまってすまない。今からお前を迎えに行く」
『え、今から⁉︎』
「もう半年以上も待ったんだ。これ以上は待てない」
『う、うん』
「切るぞ」
『はい…』
夢みたいだった。もう一度、君に会えるの…?私…まだ夢見てる?
「お嬢様。お食事の用意ができました」
『すみません。もう少し待って貰っても良いですか…?』
「承知致しました」
九月にもなると、日が沈むのも早くなってくる。もう午後8時位だから、既に空には月が輝いている。
「お嬢様。有人様がいらっしゃってます」
『通して下さい』
「はい」
暫くすると扉が開く音がする。ゆっくりと振り返るといつものドレッドヘアーのハーフアップ。だけど、アイデンティティのゴーグルがない。