第50章 Consist!〈綾織 星羅〉£
小さな紙切れをやり取りし合ってから、半年が経った。あれ以来全く連絡は取り合っていない。移動教室でチラッと見かける位でクラスも離れてしまった。来年こそは一緒に回ろうと思っていた文化祭も呆気なく終わってしまった。
「星羅ちゃん?」
『あ、ごめんね。聞いてなかった…』
「ううん。大丈夫。それでね、今度のテストの事で…」
そうだった。テストもあるし、このまま行けば、ただ待ちぼうけを喰らったまま三年生になってもおかしくない。でも、それで良いような気もする。期待をもうしなければ、諦めもついて受験勉強に専念できるし。
『これは多分テトロドトキシンの事だと思うけど…』
「だよね!ありがとう!」
良いなぁ…皆活き活きとしてて。この半年の間、生きている心地がしなかった。大切な人が隣に居ないのが苦しくて、寂しくて。話す事さえも許してもらえない。
『すみません、遅くなりました』
「いいえ」
最近あんまり食事が喉を通らない。食材を無駄にしない為にも減らして貰っている。そのせいで体重も大分落ちた。まぁ、良いダイエットになったと思えば良いのかもしれない。
「お嬢様。このままでは痩せ過ぎになってしまいます…!」
『そうでしょうか…。少し体重が増えていたので、丁度良いです』
「ですが…」
『どうにも…なりませんから…。良いんです、もう』
どれだけ涙を流してきただろう。その涙を流しただけ虚しさだけが降り積もっていくのは、もう懲り懲りだから。
「お嬢様…」
『有人君にも…もう大丈夫って伝えておいて下さい…』
「はい…」
これ以上有人君や皆に迷惑かける訳にはいかない。だって、私一人が我慢すれば皆幸せでいられる。そう信じていないと自分がどうにかなってしまいそうだった。
『ありがとうございました…また明日…は土曜日でしたね』
「ええ」
『それじゃあ、また月曜日に…』
今日だけ一杯泣こう。そしたらもう、泣くのを辞めるんだ。
『ただいま帰りました』
「お荷物をお持ちします」
『ありがとうございます』
人前では出来るだけ笑顔でいるようにした。と言っても上手く出来てるか自信ないけど。
プルルルル
スマホが振動してる。誰かから電話…?
『え…』
画面に出ているのは有人君だった。使用人の人が出て行ったのを見て、震えた手で通話ボタンを押した。
『はい』
「今からお前に話がある」