第6章 Shine! 〈綾織 星羅〉
『私にはあなたに迷いがあるように見えました』
「お前、さっきから!」
「春川!やめろ。お前の方が失礼だ」
『まずは一音目で取る練習をした方が良いです。それで間違って取っても、やっていけば慣れます』
「わかった。ありがとう。今日はもう時間のようだ。ありがとう」
『し、失礼します』
部室を出て、教室に向かおうとしたその時だった。
「待て」
『は、はい…』
さっきの春川って人だ…。ズカズカ近寄ってきて手を掴まれる。い、痛い…。お、折れそう…。
「お前、良い気になるなよ!俺は絶対にお前を認めない!」
『…!』
「綾織!」
「ちっ…」
春川さんが帰っていく。あ、危ない…もう一歩手前で折れる所だった…。
「綾織!何かあったのか!」
『き、鬼道君…』
「遅いから何かあったのかと思って来てみれば…。手首を見せてみろ」
『っ…!』
くっきりと手の跡が付いている。動かす度に痛い。近くに大会がないのが幸いし、ってところ。
「何があったんだ…」
『て、手首を握られて、それで…』
「あいつ、男だったな。女子に加減も出来ないのか!」
『多分、元から加減するつもりなんて無かったと思います』
「どういう事だ」
『部長さんに、アドバイスしてほしいって言われたので、してたんですけど…。恐らく副部長だと思われる方が怒ってしまわれて…』
「アドバイス…?」
『あ、えっと、その…』
「もしかして…」
鬼道君がスマホを取り出した。何やら調べているみたいだ。
「お前、三年連続優勝してたのか!」
『は、はい…』
「だからか…」
保健室に連れて行ってくれるみたいだ。掴まれたのは右手。私は右利きだ。これから多分苦労するな…。
「しばらくかるた部に行くのは控えた方が良い」
『は、はい…』
「その間、サッカー部に来てみないか」
『え…?』
「マネージャーが不足しているみたいなんだ」
『わ、わかりました。私に出来る事をやってみます』
「ああ。助かる」
あの人、なんであんなに私を警戒しているの…。私、何かした事あったかな…。
「これで大丈夫だろう。送って行こう」
『ありがとう。鬼道君が来てなかったら私の手首折れてたかも』
「そんなに強く掴まれてたのか!」
『多分、あの人、元から私の手首を折るつもりでかかってきてました。私が右利きだって事も知っていたのだと思います』
「なんだと…!」